タティスを擁護したバウアー自身も、相手を打ち取った際に過度に喜んではいけないという不文律を破っていると思われる場面が幾度か見られた選手でもある。9月24日のブルワーズ戦では、ピンチを三振で切り抜けた際に、これでもかと“雄たけび”を上げた瞬間もあった。また、イニングを終えベンチに戻る時には、勝ち誇った表情で手をブラブラと振る、人気格闘家のコナー・マクレガーを彷彿とさせる動きも披露している。

 今季は新型コロナウイルスの影響で試合数が短縮され、ナ・リーグでもDH制が取り入れられたが、仮に不文律を破ったと思われる場面の後に打席に立っていれば、報復死球があった可能性は高いだろう。

 ただし、バウアーは打者がホームランを打った時に喜びを表現することに対しても肯定的だ。昨季ホームラン後の「bat flip」、いわゆるバット投げで報復死球を食らったティム・アンダーソン(ホワイトソックス)に対しても同情的だった。ツイッター上では、仮に自身と対戦してホームランを打った時にはバット投げをしてもいいと“許可”さえ出している。(※実際、今シーズンにアンダーソンはバウアーからホームランを放ったが、バット投げはしなかった)

 アンダーソンのケースに関しては、メジャー通算251勝を挙げた左腕CC.サバシア(ヤンキースなど)も投手だったにも関わらず、アンダーソンを支持。米スポーツ専門局ESPNに出演した際には「パッションが溢れるところは好きだよ。どんな状況でもホームランはホームランだし、喜びたかったら喜べばいい。逆に三振を取ってマウンドから降りる時は好きなようにするけどね。打者も怒ることはできないよ」と述べている。

 過去にスター選手のブライス・ハーパー(フィリーズ)も「野球はつまらない。それは自分の感情を表現できないから。他のスポーツで行われていることができない」とコメントしている。アメフトやバスケに比べ人気が落ちている野球には、もっとエンターテインメント性を求めるべきだという訴えだ。

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今後、不文律の考えは変わっていくのか…