ギャルタレントは「強気に本音を言う」というイメージがあるので、ボケだけではなくツッコミにも親和性が高い。みちょぱは期待に応えて、有吉弘行などの芸人たちが繰り出すボケに対して的確なツッコミを返していった。

「的確なツッコミ」というのは、合格点が80点のときにきっちり80点台を出すという意味ではない。むしろ、80点で十分とされている場面で、ときに120点を叩き出してしまうのが彼女の非凡なところだ。

『アメトーーク!』(テレビ朝日系)で「みちょぱスゴイぞ芸人」という企画が行われたときに、それを象徴する場面が紹介されていた。

『アメトーーク!』の過去の企画で、50歳前後の男性芸人たちが「(みちょぱは自分たちのことを)男として見ることはないの?」というふうに尋ねたところ、彼女はこう返した。

「え、あると思ってたんですか?」

 文句なしの一刀両断。「ないですよ」や「あるわけないでしょ」という普通の返しでも及第点は取れるところだが、みちょぱはその上を行き、男性芸人たちに自分から問いかけることで彼らの淡い期待を打ち砕いた。

 このコメントは、「中年男性が、自分の年齢をわきまえずに自分がまだ若い女性に愛されるかもしれないと勘違いしているのが気持ち悪い」と思っている世の女性にとっては、この上なく痛快な一言である。一方、当事者である中年男性にとっても、ここまでバッサリ斬られること自体に爽快感がある。誰もがうなるしかない最高のコメント芸だった。

 個人的には、みちょぱが大嫌いだと公言している安田大サーカスのクロちゃんと共演するときの、本当に不快そうな冷たいリアクションが印象的だ。クロちゃんのようなクズキャラ芸人に対して、通り一遍の悲鳴を上げて不快感を示すだけなら誰でもできる。

 だが、みちょぱは容赦なく心底気味が悪いという表情を見せる。そのことでクロちゃんの異常さが浮き彫りになり、クロちゃんもますます躍動してみちょぱに迫っていくことになる。一流のレスラー同士が、試合の中でお互いを高め合っていくような理想的な関係がそこにはある。

 今のバラエティ番組でやたらと目にする機会が多い売れっ子の女性タレントというと、第一にフワちゃんであり、第二にみちょぱである。過激発言と暴走が売りのフワちゃんを「剛」の女性タレントだとすると、相手に合わせて変幻自在の技を見せるみちょぱは「柔」の女性タレントだ。

「柔よく剛を制す」の流儀で共演者を虜にするみちょぱのバラエティ対応力は、これからますます洗練されていくだろう。(お笑い評論家・ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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