委員会で質問をした立憲民主党の市川よし子県議はこう語る。

「県は共同会に過去の虐待の疑いのある事案の検証も含めて、再発防止を求めてきました。それにもかかわらず、虐待ゼロを目指そうという県立施設において、理事長名でこうした障害者虐待防止法に抵触する疑義がある文書が出されたことは、コンプライアンス意識が欠如している、と憤りさえ覚えます。現場で奮闘している職員の方々のためにも、共同会は経営陣自らが身を切る覚悟で、人事も含めた組織の改革、刷新を図るべきだと思います」

 市川氏が言うように、県は津久井やまゆり園をはじめ共同会が運営する障害者施設の実態を調査し、改善を求めてきた経緯がある。

 その背景には、植松死刑囚が裁判で「(園では障害者を)人として扱っていないと思った」などと発言したことがある。今年3月に横浜地裁で下された死刑判決でも、植松死刑囚の園での勤務経験が、重度障害者への差別意識を生んだ理由のひとつだったと認定している。

 本当に園でそうした行為があったのか。県は初公判直後の今年1月に検証委員会を立ち上げて調査を開始。園が保存している支援記録などを中心に調べ、5月に中間報告書をまとめた。その結果、一部の利用者に24時間の居室施錠を長期間にわたり行っていた事例などがあり、「虐待の疑いが極めて高い行為が長期間にわたって行われていたことが確認された」と報告した。

 障害者虐待防止法は、身体拘束について「切迫性」「非代替性」「一時性」の三要件がそろった場合に限って認めると定めている。しかし、津久井やまゆり園ではこの三要件のうち1つでも当てはまれば拘束できると認識され、会議で伝達されていたことも報告書は指摘した。

 検証委員会はその後、組織を改編し、津久井やまゆり園以外の施設の支援実態についても調査を始めた。7月に行われた検証部会の初会合では、昨年12月時点で全6施設の利用者に計171件の身体拘束があったことが報告された。共同会が運営する施設では愛名やまゆり園が52件、津久井やまゆり園が25件、厚木精華園で21件あった。このうち、不適切な身体拘束がどの程度あるのかは不明だが、検証部会の委員を務める元毎日新聞論説委員の野沢和弘氏はこう語る。

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共同会は「虐待ではない」と否定