軍事について言うと、コロナ以前からすでにアメリカはAI軍拡競争では中国におくれを取っています。米軍の戦闘管理ネットワークを標的とする電子的攻撃、サイバー攻撃で、すでに中国はアメリカに一歩先んじているというのは、米側の共通の認識です。2017年の段階で、ランド研究所の報告は「米軍は次に戦闘を求められる戦争で敗北する」と結論づけていますし、統合参謀本部議長自身も米軍がこのままの装備や軍略に固執していれば、遠からず中国に対する競争優位を失うと警告しています。

 そこに、コロナが来た。もともと戦闘管理ネットワークへの攪乱攻撃を効果的に防げないのではないかという不安があるところに加えて、通常兵器による制海権・制空権の確保さえ危なくなってきたわけです。だから、アメリカは実は国防戦略の根本的な書き換えを今求められているわけです。おそらく国防省のスタッフたちは今夜も寝ないで新しい国防計画を起案しているんじゃないでしょうか。

 日本のメディアはアメリカの経済のことは記事にしますけれど、アメリカの軍事には触れない。報道しないし、分析もしない。きっとその領域は日本のメディアにとっては「アンタッチャブル」なんでしょう。それがわからないと世界がこれからどうなるか予測できないのに。

岩田:今回のコロナは、アメリカの国内問題も曝け出していますよね。

■内田樹(うちだ・たつる)
1950年東京都生まれ。神戸女学院大学名誉教授。東京大学文学部仏文科卒業。東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程中退。著書に『私家版・ユダヤ文化論』、『日本辺境論』、『日本習合論』、街場シリーズなど多数。

■岩田健太郎(いわた・けんたろう)
1971年島根県生まれ。神戸大学大学院医学研究科教授。島根医科大学(現・島根大学)卒業。ニューヨーク、北京で医療勤務後、2004年帰国。08年より神戸大学。著書に『新型コロナウイルスの真実』『感染症は実在しない』など多数。