「清水さんのご主人は、ご両親の相続を姉妹たちに任せきりにせず、しっかりと正しい情報を取得し、清水さんと共有すべきでした。また、清水さん夫婦は、お互いに任せっきりになっている物や思い、金銭関係の情報を共有しておくべきだったと思います。生前整理は、『物・心・情報』の整理。『物』は文字通り物、『心』は思いや考えていることなど、『情報』は金銭関係や手続きが必要なものです。清水さんは、家族として認めてもらえない嫁の立場はつらかったでしょうが、『自分のことは自分で決める』という意識が不足していたかもしれません」(橋本さん)

 備えあれば憂いなし。「うちの家族は仲が良いので大丈夫!」と思っていても、いざ相続が始まるともめる家族は少なくない。「今、突然自分がいなくなったら?」という「シュミレーションをし続けることが大切」と橋本さんは言う。

「私自身は年に1回、自分の誕生月に、相続関係にある家族が亡くなったらと仮定して、毎年生前整理をしています。今年はデジタル資産の生前整理をする予定です」(橋本さん)

 「生きているうちに死んだあとのことを考えるだなんて縁起でもない」とか、「死に支度みたい」などと言って敬遠する人もいる。だが、生前整理は、万が一のときに大切な家族を守るだけでなく、新しい人生を再スタートさせる前向きな取り組みだ。

「今、突然自分がいなくなったら?」

 大切な家族を苦しめる可能性はないか、シュミレーションをしてみてほしい。(取材・文/旦木瑞穂)

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旦木瑞穂

旦木瑞穂

プロフィール:旦木瑞穂(たんぎ みずほ)/愛知県出身。グラフィックデザイナー、アートディレクターを経て2015年に独立。葬儀・お墓・ダブルケア/シングル介護・PMS/PMDDに関する執筆のほか、紙媒体の企画編集・デザイン、イラスト制作を行う。

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