開幕3戦目での先発登板とも伝えられていたが、新型コロナウイルスの影響で開幕が延期。6月7日の練習試合・中日戦で1イニングを投げた後は、開幕2軍が決定し調整を続けていた。その後の7月5日、『脊椎内視鏡頸椎手術』を受けた。現在は復帰を目指す真っ最中だが、復帰までは相当の時間を要すると見られている。

「思い切った挑戦だが、実は合理的判断なのでは」と分析するのは西武担当記者。

「西武復帰で注目される中、今年中の手術など考えられない。しかしコロナ禍で開幕延期、シーズンが短縮された。調整など難しい状況下、結果が求められるベテラン選手が究極の選択をした。言葉は悪いが、『今年は捨てて、来季に野球人生の全てを注いだ方が可能性は高い』と考えたのではないか」

 自らの身体、技術力などは松坂自身が最も理解している。冷静に現状分析した結果、『今季は捨てる』という判断になったとも思える。

 国内復帰後のソフトバンクでは、3年の在籍中(15~17年)わずか1試合の1軍登板に終わった。その後、中日に移籍した18年は11試合に先発登板して6勝(4敗)を挙げ、オールスター出場、カムバック賞受賞などで復活を印象付ける。しかし昨年は肩の故障もあり1軍登板はわずか2試合。『ジキルとハイド』、どちらが本当の松坂なのだろうか。

「自分自身の商品価値と賞味期限がわかっている。現役生活も長くない。悪い言い方だがお金に関しては十二分に稼いだ。ここから先は自分自身の野球人生を満足して終わりたいのではないか。最後に納得した投球をするために手術した。球団、松坂の双方にその部分の理解がないと考えにくい決断」(西武担当記者)

 相反する2つの思い。苦戦が続くチームに少しでも貢献して欲しい。投手・松坂大輔の最後の輝きを見たい。ファンからすると複雑な状況にあることは間違いない。

「球児が今シーズン中に復帰しようとリハビリしている段階で、コメントするのは控えさせて下さい」

 松坂は藤川に対してのコメントを避けた。しかし見方によっては自身への思いにも読み取れる。同時に五十嵐にも当てはまるように感じる。

 藤川、五十嵐、松坂の境遇は三者三様。しかし1つ言えることは、球史に残る3人を目にする時間はあまり残っていないということだ。