最近の中古相場は、坪単価800万円台から1600万円台。新築時とは変わらない水準を維持しています。ただ、いかんせんこのマンションは、新築時の販売価格がいかにも高すぎました。これから10年後も新築時の価値を維持、というわけにはいかないでしょう。

 好材料としては、このマンションの周辺エリアには同規模の開発が可能な土地が出てきそうなこと。その場合、販売価格は坪単価が1000万円を超える可能性があります。そうなれば、こちらの資産価値にも好ましい影響があるかもしれません。

■THE ROPPONGI TOKYO
分譲会社/三井不動産レジデンシャル他
日比谷線 「六本木」駅 徒歩2分
全611戸 2011年11月築 地上39階 地下1階
 
 このマンションは、普通の物件と同列に考えない方がいいでしょう。外国にあるようなサービスアパートメントの、高級タイプというべきでしょうか。マンションなのに、住民は一流ホテル並みのサービスが受けられます。そういうところに住みたい人にとっては、価値の高いマンションです。しかし、そういうことを求めない人にとっては、ただ維持費の高いマンションです。

 場所は六本木駅からは「徒歩2分」の表示。六本木通りを溜池山王駅方面に歩き、ややごちゃごちゃ感が薄れ始めるあたりです。六本木ヒルズからは徒歩5分ぐらいのところにあります。

 このマンションは、建物が完成した後も1年以上販売が続いていました。当時はまだ日本全体が東日本大震災のショックから抜けきれておらず、こういうバブリーな臭いをプンプンさせたマンションで、派手な暮らしを謳歌することがはばかられていたのかもしれません。ここ4,5年はずいぶんと景気も回復して、再びバブルっぽい空気も広がっていましたが、今度は、新型コロナウイルスの蔓延。こういうマンションが市場にどう受け取られるのかは未知数です。

 しかし、このタイプのマンションに住みたがる人はどんな時代にも一定数います。それゆえ、価格は多少変動するでしょうが、この場所にあって今のようなスタイルを続ける限り、資産価値の底は固いと思います。現在の流通価格は、新築販売時よりも3割程度は上がっている感じです。コロナ不況による下落率は高そうですが、新築時まで戻すには、あと2、3年はかかりそうに思えます。(文=住宅ジャーナリスト・榊淳司)