普段は飄々とした雰囲気なのに、役を演じるといきなり変わっていく。SMAPであったこと、元SMAPであることが、役者としては、正直、それが邪魔した部分もあったかもしれない。だけど、そんなこと関係なかった。

 この作品で彼はさらに変化しただろうし、彼の力とすごさに気づけなかった人は気づけたんじゃないかと思う。だからうれしい。

 この作品は、疑似親子の話である。ここから少々マニアックな話になるが、1998年7月20日放送の番組、「SMAP×SMAP 特別編・草なぎ剛、パパになる」と言う番組がある。草なぎ剛が3日間だけ、二人の子どもの父親になるというリアリティーショーだ。3日間、子どもと一緒に暮らすのだが、どんどん父親になっていった。最後の方は子どもたちに厳しく愛を持って向き合う。

 その作品を見て、泣いた。これは草なぎ剛にしか出来ないなと。薄皮一枚のところに「愛と狂気」が存在するからだ。

今回の「ミッドナイトスワン」を見て、あのときの草なぎ剛を思い出した。「愛と狂気」。

 この作品がたくさんの人に見られて、海外でも評価されて、そして日本のアカデミー賞でも、賞を取ったら・・・。もう一つ時代が変わったのだなと強く思える。

 どんなにしんどくても、強い信念を持ってやり続けていれば、何かが起きる。やり続けてこそ。生きてこそ。

自分ももっと頑張ろうと強く思えた。

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。パパ目線の育児記録「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)が好評発売中。10/31スタートのテレビ朝日系ドラマ「先生を消す方程式。」の脚本を担当。バブル期入社の50代の部長の悲哀を描く16コマ漫画「ティラノ部長」の原作を担当し、毎週金曜に自身のインスタグラムで公開中

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鈴木おさむ

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

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