Jリーグを筆頭にプロ野球などでも、『セカンドキャリア』の重要性は当たり前になってきた。しかし競技だけしか知らない、いわゆる『スポーツバカ』で社会常識すらなければ、『セカンドキャリア』選択の幅も狭まる。現役時代に『デュアルプロ』として、社会人スキルを身につけておくこともより重要となってくる。また黒岩のように、企業人として認められることがプロ選手としてのアドバンテージにもつながる。大きな意味では地域、社会貢献にもなり、プロスポーツクラブ存在の大義名分にも合致する。

 アイスホッケーの競技人口は全世界で約180万人にものぼる。欧米ではサッカーなどと並び人気スポーツであり、特に最高峰であるNHLは北米4大プロスポーツに数えられる。しかし日本の競技人口は約2万人と言われ、プロリーグであるアジアリーグのメディア露出はほとんどない。代表レベルでは、男子は98年長野五輪以降オリンピック出場がない。女子『スマイルジャパン』が五輪や世界選手権などで活躍した時に取り上げられるくらいだ。

 アイスホッケーを取り巻く環境は冷え切っている。

 プロチームの新規参入ならば大ニュースだ。しかも関東近郊にホームを置くのは、09年廃部のSEIBUプリンス・ラビッツ以来12季ぶりだ。しかしこの日、取材に訪れたメディアの数は10人ほどというものだった。

「今ではマイナースポーツになってしまった。こんな時期に参入するグリッツは苦労するはず。でもその心意気がうれしいし、頑張って欲しい」

 アイスホッケー専門誌『Breakaway』土田健一氏はグリッツの挑戦を心から称賛している。

「野球、サッカーだけでなく、バスケットにも大きく差をつけられた。でもこんなに面白い競技はない。僕はアイスホッケーのプレー経験はないのですが、ひと目見て魅力にハマってしまった。盛り上げる手助けができればと思った。そのためには従来とは異なったアプローチも必要で『デュアルプロ』がある。クラブのビジョンに心から賛同できた。そういった人たちの集まりがグリッツで、これからみんなで形を作り上げていきたい。ボランティアなどスタッフ数は、アジアリーグでトップだと思う。それが誇りであり大きな武器」(川口氏)

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アイスホッケー人気に火はつくのか…