設立に関してビジョンに掲げたのは、「夢と生きる活力に満ちた社会を創る」。

 具体的には『デュアルキャリア』『地域貢献』『アイスホッケーの普及・育成』という3つの柱が存在するが、異彩を放ったのが『デュアルキャリア』だ。

「スポーツでも一流、仕事でも一流」なアスリート集団を作り上げる。

 プロ選手としてだけでなく、職場でも活躍し、地域での社会貢献も担う『デュアルプロ』人材の育成を進めること。他との差別化を図るとともに、今後のプロスポーツクラブのロールモデルを目指すという。

「コロナ禍真っ最中での新規参入は正直、想定外ではあった。でもこんな時期だから『デュアルプロ』は重要だと思う。どんな企業も先行きはわからない状態でプロ選手も同じ。プロ選手になれる窓口が狭くなっているだけでなく、仮になれてもいつリリースされるかわからない。『セカンドキャリア』の重要性は何年も言われているが、この時代になってより重要度合いは高まっている。そして『セカンドキャリア』を考え始めた時点で遅過ぎたという事例も多い。現役時代から『デュアルプロ』でいることが、のちの『セカンドキャリア』にも生きてくる」(グリッツ広報戦略本部長・川口俊介氏)

『デュアルプロ』とはアイスホッケー選手としてだけでなく、普段は企業人のプロとして生活をする選手形態。グリッツが雇用してくれる企業を探すケースもあれば、すでに働いている選手と契約する形もある。またグリッツ自体の業務に携わる場合もあるという。

 ゴーリーの小野航平は、以前はアイスバックスに所属、アジアリーグで約100試合出場した経験を持つベテラン。住居のコーディング施工などをおこなうエコテック社の営業部に所属するのは有名だ。また菊池秀治は大手保険会社、川村一希は大手携帯電話会社でそれぞれ仕事をこなす。

「黒岩義博は地元のIKEA港北店で勤務している。ありがたいことに店全体で黒岩を応援してくれる。性格もあるのですが、実直で何に対しても真面目に取り組むのでそこを周囲は理解してくれたのでしょう。『俺はアイスホッケーのプロなんだから』という葛藤がある選手もいるでしょうが、そこは時間を割いてしっかりと話し合う。『デュアルプロ』『セカンドキャリア』の重要性を理解してくれないと、仕事も競技も中途半端になる。選手、クラブの両方にとって良いことは1つもない」(川口氏)

 グリッツでは契約時、『デュアルプロ』に関して徹底的に話し合う。理解、納得できない選手に関しては、いくら競技の才能があっても契約しない。

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海外では人気を誇るアイスホッケーも…