僕、昔、アルコール依存症にかかった後輩芸人を世話していた時期がありました。そいつがお酒を絶対に飲まないという約束で、僕の運転手などを2~3年していました。昔このコラムにも書いたことがあるんですけど、結局は「飲んでいない」って言いながらお酒を飲んでしまっていたんですよね。

 今考えてみるともしかしたら酔っ払った状態で日常的に運転をしていた可能性も。僕はワゴンの後部座席に乗るから、運転がおかしくない限りは飲酒していたかまではわからない。ある日、遅刻したので「前の日に飲んでいたからか?」って聞くと、「はい……」って最後は白状していた。その当時、結構厳しくしていたし、病院や酒を断つための支援団体などにも通わせていたけど、本人はつらいことがあったりすると隠れてお酒を飲んでしまっていたようだった。

 厳しく見守っていたつもりなんだけど、それだけじゃダメなんだなって。厳しくやるってことだけではお酒と縁を切ることは難しい。そんな経験もありまして、誰しもなってしまうし、僕だってアルコール依存症にならないとは限らない。みんなにその可能性がある。

 後輩を面倒見ているときに僕も学んだんですけど、アルコール依存症の先には何が待ち受けているかというと「死」なんですよね。病院で「肝臓が悪くなっている。もう飲んじゃダメだ」と言われたとしても、まだお酒が欲しくて欲しくて飲んでしまう。肝臓を悪くして入院していても、飲みたい気持ちと闘っていく。治療中なのに隠れて飲んでしまう人もいる。最終的に放っておくと死に至るのがアルコール依存症で、だから依存症なんですよね。

 だから、アルコール依存症は怖い病気であることはたしかですよね。もしかしたら、メディアは酒造メーカーというスポンサーさん手前、アルコール依存症を取り上げることが難しいのかもしれない。でも、アルコール依存症というのが結構な数の事例としてあるのも事実だから、それはそれで、アルコール依存症になってしまった人の個人の否定をするのではなく、その依存症自体をきちんと取り上げたほうがいい。

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もちろんお酒も楽しんできちんと生活している人が大多数