日本ハムの斎藤佑樹(左)と現在は野球解説者の江川卓氏(右) (c)朝日新聞社
日本ハムの斎藤佑樹(左)と現在は野球解説者の江川卓氏(右) (c)朝日新聞社

 2006年夏の甲子園優勝投手・斎藤佑樹(早稲田実-早大-日本ハム)がプロ10年目の今季を最後に現役引退濃厚という一部報道があったが、「東スポWeb」によれば、本人は親しい関係者に「自分から引退するようなことはない」と完全否定。仮に今季限りで日本ハムを退団しても、海外も含めてオファーがある限り、ボロボロになるまで野球を続けたい意向だという。

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「ボロボロになるまで」という“引き際の美学”は、昨オフ、現役続行を希望し、中日を自主退団した松坂大輔(現西武)にも相通じるものがあるが、その一方で、好対照な例として、余力を残して未練なくユニホームを脱いだ江川卓(巨人)を思い出すファンも少なくないだろう。

 通算135勝の江川と昨季まで通算15勝の斎藤。2人のプロでの実績は比べるべくもないが、アマチュア時代は共通点も多かった。

 ともに甲子園のヒーローとして社会現象になり、出場回数も同じ春夏1回ずつ。斎藤が06年夏の決勝、駒大苫小牧戦で延長15回を投げ切れば、江川も73年夏の1回戦、柳川商戦で延長15回完投勝利。そして、ともに六大学の花形エースとして華々しく活躍し(江川は通算47勝、斎藤は31勝)、ファンの大きな夢と期待を背負ってプロ入りしたという点でも共通している。

 また、87年限りで引退した江川は当時32歳。くしくも今季の斎藤と同年齢になる。江川引退翌年の88年に生まれた斎藤が、江川が引退したときと同じ32歳で、野球人生の崖っぷちに立たされていることにも、因縁を感じさせられる。

 両者のレベルの差は歴然としているものの、プロでの活躍時期のピークが短かったという点でも、共通している。

 江川は“空白の1日”事件や小林繁との三角トレードなどの騒動が災いし、79年の巨人入団後はダーティなイメージが付きまとったが、81年に20勝、82年に19勝を挙げ、“怪物”の本領を発揮する。だが、82年のオールスター前に肩を痛め、シーズン終盤に急失速。全盛期は実質2年足らずだった。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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互いにプロ入り後の負傷がキャリアに響く