俳優、脚本家の佐藤二朗さん
俳優、脚本家の佐藤二朗さん

 個性派俳優・佐藤二朗さんが日々の生活や仕事で感じているジローイズムをお届けします。今回は、ミスターアナロガーからデジタラーに生まれ変わった記念に、読者のネットリテラシーを高めてくれるという。

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 タブレットを買った。

 もう一度言う。タブレットを買ったのだ。

 いよいよ俺もここまで来たかという感じだ。いまだガラケーで、ミスターアナロガーの名をほしいままにする俺だったが、ついにデジタルの最先端兵器を手中におさめたのだ。輝かしいデジタルの扉を今、颯爽と開けたのだ。

 よし。こうなったならば、デジタラーに生まれ変わった記念として、俺が最近知った最先端ネット用語を皆さんに披露してさしあげよう。生まれ変わった俺のデジタラーぶりで、皆さんをさらにさらに驚愕の渦に導こう。

「ようつべ」

 トップバッターにふさわしい最先端ネット用語と言えよう。長きに渡り、なんのことやらさっぱり分からなかった言葉だが、デジタラー二朗は知った。デジタラー二朗は「ようつべ」を知ったのだよ諸君。そう。「YouTube」だ。「YouTube」をローマ字読みしたまえ。ホラ、「ようつべ」になるだろう。…驚くのも無理はない。俺もこれを知った時は、世界の王になった気がしたものだ。しかし驚くのはまだ早い。俺のデジタラー二朗ぶりをさらに披露しよう。

「密林」

 正直、この言葉をネットで見かける度、オジサンはなんか、なんというか、若干、卑猥な意味の何かと思っていた。その薄汚れたオジサンの感性もどうかと思うが、しかしデジタラー二朗は知った。デジタラー二朗は知ったのだよ諸君。「密林」は…「Amazon」だ。まんまだ。わりとまんまだ。「Amazon Prime Video」で「誰かが、見ている」配信中だ。さりげなく宣伝を挿入するあたり、デジタラー二朗のぬかりなさはますます冴え渡るばかりだが、続いてはこの言葉。

「スクショ」

 急に今までと毛色が異なる言葉が登場した。俺が酔っ払って恥ずかしいツイートをして、できればそのツイートを消したいと思っていると、「消しても無駄ですよ。スクショしましたから」みたいなコメントをよく見かけ、「なんだスクショって。そんなドヤ顔ができるスクショってなんだ。学校でオシッコか。スクールで小便か」と思ったものだ。ごめん後半ウソ。スクールで小便とは思わない。いやスクールで小便をすることもあるだろうが、そもそも51歳のオジサンは随分と前にスクールは卒業したが、ちょ待て、話がそれる、これ以上話がそれる前にそろそろ「スクショ」の正体を明かそう。心の準備はいいか、皆の者。破格の衝撃に備えよ。「スクショ」とは…「スクリーンショット」だ!いや~ホント、これを知った時、俺は宇宙の王になった気がしたものだ。

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佐藤二朗

佐藤二朗

佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家、映画監督。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や映画「幼獣マメシバ」シリーズの芝二郎役など個性的な役で人気を集める。著書にツイッターの投稿をまとめた『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)などがある。96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がけ、原作・脚本・監督の映画「はるヲうるひと」(主演・山田孝之)がBD&DVD発売中。また、主演映画「さがす」が公開中。

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ごめん、これ、いまだに分からんのです…