先日の錦織一清、植草克秀の退所、あるいは長瀬智也の退所とTOKIOの事務所内独立には、これも関係しているのではないか。つまり、若すぎる後継者の誕生がベテランの流出をもたらし、地図にも影響を生じさせたのである。

 ちなみに、最古参の近藤真彦が「マッチさん」として特別待遇を受けているように、ジャニーズには年功序列的なところがある。タッキー以前に舞台演出家として実績を作っていた錦織は、居場所を取られた気分だったろう。また、後継者候補と目されていた東山紀之も複雑な心境かもしれない。

 ただ、これだけの事務所を引っ張っていくにはタレント兼任では難しい。その点、引退して裏方に徹するという滝沢の決断はなかなかのものだ。とはいえ、結果を出さないと、カリスマ性も求心力も生まれない。たとえば、今回のコロナ禍により、嵐の活動休止が来年まで延期されるのではという期待の声があがったが、そうなる気配は今のところない。その説得は、彼には荷が重いだろう。

 というのも、滝沢は嵐の5人とほぼ同世代だし、櫻井翔とはかつて不仲もささやかれた関係だからだ。4年前「櫻井・有吉THE夜会」(TBS系)のなかで企画された「サシ飲み」ロケでは、こんなことを言われていた。

「俺はちょっとね、タッキーのことを斜めに見てたと思う」

 Jr.の絶対的エースに対する嫉妬から、櫻井は距離を置いてしまっていたという。滝沢も「それは俺も感づいてたかもしれない」と振り返った。つまりはそういう意識をぶつけあう関係だったわけだ。今は立場が変わったとはいえ、経営者とタレントという関係に切り替えるのは容易ではない。

 そういう意味で、滝沢が結果を出すとしたら、タッキー以降の世代をどんどんブレークさせることだろう。もともと、ジャニー喜多川のカリスマ性や求心力も、次々と人気アイドルを世に送り出すことから高まっていった。現役ジャニーズの若手にも、新しい地図のファンと同じくらい熱いファンがいる。彼らがツイッターなどで発する言葉からは、まだ見ぬ「推しの大ブレーク」を夢見ていることがひしひしと伝わってくるのだ。

 滝沢がいつ、そういうものをみせられるのか。ジャニーズをめぐる「地図」はそれによってまた変化していくはずだ。(一部敬称略)

宝泉薫(ほうせん・かおる)/1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など

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宝泉薫

宝泉薫

1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など

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