こうしたゲリラ戦を可能にしたのは、彼女の高いメディア活用能力だ。もともと、ジャニーズ事務所にいたときからそこには定評があった。担当するタレントが掲載された雑誌や新聞をすべてチェックし、そのデータを資料化する。いつ、どの雑誌で、何を着て、どんな髪形で、何を話したか、それを綿密に把握することで、ファンから飽きられるのを防ぎ、次の戦略に生かすためだ。

 また、この作業は彼女自身が世の流行を感知し、見誤らないという能力も高めた。何が使えてどこなら潜り込めるか、そんな嗅覚にたけているところが業界で一目置かれてきたゆえんだ。

 もちろん、3人が長年、国民的アイドルとして活躍してきたことも大きい。そんな3人と彼女が組んでいるのだから、ジャニーズにも簡単には負けないだろうという見方も生まれ、サントリーのような大手企業のCMにもつながったのである。

 年季が入っているのはファンも同じで、とにかく熱い。筆者がたまに3人の活動について好意的なツイートをすると、かなり拡散されたりもする。このまま消えさせてなるものかというファンの強い願いが、ゲリラ戦を支えたのだ。最近のインタビューで、稲垣もこう語っている。

「ファンの方との長い歴史の中で、思い合う気持ちや絆を改めて確認できた3年間でした」(週刊女性)

 そうやって新しい地図が善戦しているうちに、ジャニーズの力もかつてほどではないのでは、という空気が漂い始めた。その変化を感じ取ったのか、中居が円満独立を実現。また、元NEWSの手越祐也は退所会見で「自分がやりたいアイデアが、ジャニーズにいたらスピード感が遅いし、なかなかかなわない」と事務所批判までしてみせたが、独立後もそれなりに元気だ。先日、哀川翔との共演CMが決まったことをインスタグラムで公表した。

 そのジャニーズ事務所では、大きな新陳代謝が起きた。滝沢秀明の引退と副社長就任だ。ジャニー喜多川とメリー喜多川という創業ツートップから、何を引き継ぎ、何を変えるのか、興味深いところだが、彼の幹部転身はもろ刃の剣でもある。タッキー以降の世代はともかく、タッキー以前の世代にとってはやはり面白くなかったりするからだ。

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「タッキーのことを斜めに見てたと思う」(櫻井)