小学校受験では、「ペーパー」と呼ばれるいわゆる筆記試験のほか、跳んだり走ったりといった運動の試験など、学校によってさまざまな試験が課される。その中で近年、どの学校も重視しているというのが、行動観察だ。行動観察とは、子どもが遊ぶ様子などを観察し、子どもの特性を見る試験のこと。小学校受験の選考過程は一切公表されないが、行動観察の試験では、子どもたちのどんなところが見られているのか。現在発売中の『AERA English特別号「英語に強くなる小学校選び2021」』では、行動観察対策専門の幼児教室を取材した。

試行錯誤しながら、ヘリウム風船をゆっくり落とす方法を探す子どもたち(撮影/高野楓菜・写真部)
試行錯誤しながら、ヘリウム風船をゆっくり落とす方法を探す子どもたち(撮影/高野楓菜・写真部)

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「これは僕の夏色です。赤と黄と緑と茶色を使いました」

 6歳の男の子が、教室の前に立って、「じぶんだけのなつのいろ」をテーマに描いた絵を掲げた。

「蒸し暑い感じがするね」
「なぜその色を選んだの?」

 子どもたちから質問や感想が次々と飛び出す。

 年長児6人による絵画作品のプレゼンテーションが行われていたのは、東京都文京区の幼児教室「学びの道教育研究所」。行動観察対策を専門とし、毎年、慶應義塾幼稚舎や東京学芸大学附属竹早小、雙葉小などの難関校に合格者が輩出する。

 この日の講座は90分。シール貼りの課題を素早くこなす「指示行動」、いじけている友達を楽しませる方法を見つけるワークタイム、ビニール袋や凧糸を自由に使ってヘリウム風船をゆっくり落とすゲームなど、テンポよく進められた。

■自己効力感が高い子は 周りの力も引き上げる 

 主宰する池田哲哉さんは、「小学校受験で問われるのは、教育改革が掲げる学力そのものです。主体性や協働性が評価されるいま、どの学校もペーパー試験より行動観察に力を入れています」と話す。

とくに難関校が求めているのは、「自らの価値基準で行動できる自立した子ども」だと、池田さんは言う。

「自分の強みで壁を乗り越える体験を重ねてきた子どもは、『自分にはできる』と思える自己効力感が強く、集団の中でも光ります。こうした子は周りの力も引き上げるので、結果的に集団の価値が高まる。この自己効力感は、幼少期から親が『転ばぬ先の杖』を与えすぎないほうが伸びます。何か問題が起きたときに自分の力で引き上がらないと成功体験になりませんから」

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曽根牧子
編集者/ライター 曽根牧子

朝日新聞出版アエラムックチームの編集・ライター。『AERA English』『英語に強くなる小学校選び』などで教育、英語学習、小学校受験に関する記事を執筆。

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