放送作家の鈴木おさむさん
放送作家の鈴木おさむさん

 放送作家・鈴木おさむさんが、今を生きる同世代の方々におくる連載『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は、家族や夫婦の形について。

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 結婚して18年、息子、笑福が生まれて5年がたち。家族の形って人それぞれだとは思うのですが、最近、これがうちの夫婦の形だと思えることがありました。

 先日、保育園に行く前、息子が慌ててトイレに行きました。焦ったせいか、おしっこがトイレの床とズボンにこぼれてしまい、息子がトイレから「おしっこ、こぼれちゃった~」と大きな声で言いました。

 その日は僕も妻も仕事が早いため、慌てていました。そういう時に限って、こういう小さなハプニングは起きるものです。

 トイレに行くと、思っていたより、息子のおしっこが床にこぼれていました。何かで拭かなきゃと思った時、息子が「ママー、拭くものもってきてー」と言いました。すると妻が走ってトイレに来て「はいよ」とおしっこの塊のところにあるものを投げました。グレーの布です。おしっこを勢いよく吸っていく。そのグレーの布、見覚えがありました。

 よーく見ると……僕の着ていたTシャツでした。

 その数日前、妻と一緒にTシャツを整理しました。まだ着られるもの、もう着られなくなったもの。その中の一枚のグレーのTシャツ。僕のお気に入りだったのですが、結構着込んだため、ヨレヨレになってたので、妻が「もう、さよならしようか」と言ったので、さよならすることにしました。捨てたと思っていました。

 が、そのTシャツが、トイレでポイっと投げられて、おしっこの上に載り、おしっこを勢いよく吸っていく。グレーのTシャツがおしっこを吸って色濃くなっていく。

 確かにね、捨てると決めたものですよ。捨てると決めたものですけどね、自分がこないだまで何度も着てたTシャツが、息子のこぼしたおしっこを吸っていく姿を見ているとね、なんとも切ない気持ちになってきまして。

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鈴木おさむ

鈴木おさむ

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

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Tシャツの末路に自分の姿が重なって……