楽天1年目の今季、見事な復活を果たした涌井秀章 (c)朝日新聞社
楽天1年目の今季、見事な復活を果たした涌井秀章 (c)朝日新聞社

 楽天のベテラン右腕・涌井秀章がチームをけん引している。

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 西武ロッテと渡り歩き、昨オフにトレードで楽天に移籍。近年は苦しい投球が続いていたが、今シーズンは本来の調子を取り戻したかのように見える。何がこの男を変えたのだろうか……。

 これが「終わりが近い」とささやかれていた投手なのだろうか。昨年はわずか3勝に終わり限界説まで飛び交っていた涌井。今年は開幕からローテーションを守り、8月26日まで無傷の8連勝をマーク。8月5日のソフトバンク戦では、球団初のノーヒットノーランにあと一歩と迫る、1安打完封勝利を収めた。

「成績はもちろん、野球に対する姿勢など存在そのものが大きい。素晴らしい投手が加入してくれた」

 エースと呼んでもおかしくない活躍をみせる涌井を、楽天球団関係者は絶賛する。

「若い投手が多いので参考になることばかり。特にオンとオフの切り替え。普段は気さくな人なのに、ユニフォームを着ると人が変わる。自分が納得するまで練習し、その間は人を寄せ付けないオーラがある」

 高校時代から人並外れた練習量には定評があった。30代半ばになってもチームトップクラスを誇る。

 昨年との違いは何なのか。

 技術的には即効性ある新球種をマスター、投球スタイルをマイナーチェンジしたことが大きい。

「真っ直ぐとそこまで変わらない球速で食い込んで行くから、打者も狙いを絞ることはなかなかできないと思う。ストライクゾーンで動いて行くから」(涌井)

 マスコミでも話題となった『こやシン』と呼ばれる速いシンカー。小山伸一郎投手コーチから教えてもらったもので、130キロ台と球速もありバットの芯を外すことができる。『ツーシーム』とも言えるこの球を生かすことで、球数減につながった。それを従来の多彩な球種と組み合わせ、緩急をより使えるようになった。

「総合的な技術の高さは変わらない。それよりも気持ちの充実度がまったく違う」

 プロ入り時から見続けてきた在京テレビ局野球担当は、不調の原因は気持ちの問題だったと推測する。

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“ライバル”の存在がモチベーション?