一方、もう一つの「メタボ」で太り過ぎや生活習慣病の改善をはかりたい場合。メタボになると、内臓脂肪が増加し、高血圧、高血糖、高脂血症などを発症します。さらに体重増加により過剰な重量負荷がかかるため、変形性関節症の発症率も上昇します。メタボ対策としては、「食事制限」で体重を減らすことに加えて、「筋肉の増強による基礎代謝の向上」を目指すとよいでしょう。ウォーキング、サイクリング、水泳、ジョギングなどの有酸素運動を、積極的におこないましょう。

 また、高齢者のスポーツにおいては、足腰などの運動器以外にも循環器系や呼吸器系にかかる負荷も考慮する必要があります。メディカルチェックをうけて、日頃の身体状況を確認しておきましょう。持病で内科疾患がある人は、それがきちんとコントロールされているか、かかりつけ医に確認しておきましょう。

 スポーツドクターと呼ばれる人たちはスポーツ選手の治療ばかりでなく、このような健康スポーツのメディカルチェックや運動処方をおこない、運動に関する医学的な指導もできる医師が多いので、ぜひ相談してみましょう。高齢者がスポーツをする際に、身近にスポーツドクターがいれば頼れる存在となるでしょう。

 以上、高齢者スポーツの注意点について、おわかりいただけましたか? いつまでも若々しく健康でスポーツを続けるために、運動を続けるモチベーションが大切です。そして運動をする際にはいつも、適切な服装で、十分な水分補給と、ウォーミングアップ、クーリングダウンを忘れないでください。高齢者のみなさんが、生涯スポーツを楽しみながらいきいきと健康的な生活を送れるよう願っています。

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松本秀男

松本秀男

松本秀男(まつもとひでお)/医師。専門はスポーツ医学。1954年生まれ。東京都出身。1978年、慶応義塾大学医学部卒。2009年から2019年3月まで、慶応義塾大学スポーツ医学総合センター診療部長、教授。トップアスリートも含め多くのアスリートたちの選手生命を救ってきた。日本臨床スポーツ医学会理事長、日本スポーツ医学財団理事長。

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