一方、スポーツがあまり好きでない人、運動習慣がない人には、できることから徐々に始めることをお勧めします。まずは日常生活の中で歩くなどの身体活動を増やす工夫を始め、慣れてきたら10分ずつ運動時間や内容を増やしていきましょう。いきなりスポーツクラブに入会する、ジョギングを始めるなど、つらい運動でも頑張ろうとする必要はありません。無理をすれば、ひざや腰を痛めたり、疲労骨折したり、思わぬケガにつながりかねません。第一、決して長続きしません。運動に慣れてきたら、テニス、ゴルフ、卓球やゲートボールなど、さまざまなスポーツを楽しんでみてください。仲間と一緒にでき、ゲーム性があって楽しめるスポーツは、長続きしやすいでしょう。

 高齢者スポーツの注意点ですが、持病がある場合には、運動によりかえって症状が悪化する恐れがあります。高齢者は、人によって基礎疾患の有無、運動器機能や体力の個人差は大きくなります。それぞれの目的に合わせて、適切な運動法を選ぶことが大切です。

 スポーツの利点には、おもに次の二つの病気の予防・治療効果があります。一つは、骨、関節、筋肉などの運動器の働きが衰える「ロコモティブ症候群」(以下、ロコモ)。もう一つは、生活習慣病である「メタボリック症候群」(以下、メタボ)です。

 もし目的が、「ロコモ」である場合。ロコモは、転倒による骨折や関節疾患を発症するリスク要因です。また、ひざや腰の障害が起こると移動機能が低下し、さらに進行すると介護を要するようになります。ロコモ対策としてやるべきことは、運動機能低下を防止するための「筋力アップ」です。とくに下肢の筋力とバランス能力を高めるため、スクワットや、目を開けたまま片足立ちをするとトレーニング効果があります。ただ、すでにひざや腰の障害が進んでいて、スクワットなどで痛みが出る場合には、続けていいかどうかをかかりつけ医に相談してみてください。

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