※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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松本秀男(まつもとひでお)/医師。専門はスポーツ医学。1954年生まれ。東京都出身。1978年、慶応義塾大学医学部卒。2009年から2019年3月まで、慶応義塾大学スポーツ医学総合センター診療部長、教授。トップアスリートも含め多くのアスリートたちの選手生命を救ってきた。日本臨床スポーツ医学会理事長、日本スポーツ医学財団理事長
松本秀男(まつもとひでお)/医師。専門はスポーツ医学。1954年生まれ。東京都出身。1978年、慶応義塾大学医学部卒。2009年から2019年3月まで、慶応義塾大学スポーツ医学総合センター診療部長、教授。トップアスリートも含め多くのアスリートたちの選手生命を救ってきた。日本臨床スポーツ医学会理事長、日本スポーツ医学財団理事長

 高齢者にとって、いつまでも健康なからだを維持することは共通の願いといえるでしょう。将来寝たきりになってしまう原因として、ロコモティブ症候群やメタボリック症候群などがあります。その予防・治療のために、スポーツを始める高齢者が増えています。高齢者がスポーツを楽しみながら長く続けるにはどんな注意が必要なのか、日本スポーツ医学財団理事長の松本秀男医師に聞きました。

【写真】日本スポーツ医学財団理事長の松本秀男医師

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 日本は、世界でもトップレベルの長寿国です。現在、超高齢社会にあり65歳以上の高齢者の割合は総人口の3割に近づいています。多くの高齢者が、寝たきりになることなく、健康長寿をまっとうすることを願っています。要介護状態になる高齢者を一人でも減らし、膨大化する医療費を削減し、皆が健康に暮らせる長寿社会にすることが私たちの課題です。

 そこで期待されているのが、心身の健康の保持増進に役立つ「健康スポーツ」の効果です。スポーツがからだを健全にし、骨粗しょう症やがんを予防し、心の健康にもよい効果をもたらすことは、すでに多くの研究で明らかにされています。高齢者が楽しみながらスポーツを継続することで、からだを丈夫にし、認知機能を高め、生活習慣病を予防・改善できれば、寝たきりや死亡を減らして、寿命を延ばすことができます。

 国が推進する「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」のなかで、高齢者が生きがいを持って健康で活力ある生活をいとなむため、定期的、継続的な運動・スポーツが推奨されています。ですが調査によると、1回30分以上の運動を週2回以上、1年以上続けている運動習慣のある人は、65歳以上の男性で46.2%、女性では39.0%にとどまっています(平成29年国民健康・栄養調査)。

 毎日のことですので、「食事はおいしく」が理想であるように、「スポーツは楽しく」続けることが一番です。若い頃からスポーツをする習慣がある人であれば、楽しみながら続けていくことは難しくないでしょう。高齢だからといって、基本的にやってはいけないスポーツはありません。競技スポーツにチャレンジすることも、QOL(生活の質)の充実や生きがいにもつながるでしょう。ただ、からだには少なからず加齢性の変化が起こり、若い頃に比べて運動能力は低下していることを忘れてはいけません。「どのくらいまで負荷をかけてよいか」を意識して、運動のやり過ぎにはくれぐれも注意しましょう。
 

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松本秀男

松本秀男

松本秀男(まつもとひでお)/医師。専門はスポーツ医学。1954年生まれ。東京都出身。1978年、慶応義塾大学医学部卒。2009年から2019年3月まで、慶応義塾大学スポーツ医学総合センター診療部長、教授。トップアスリートも含め多くのアスリートたちの選手生命を救ってきた。日本臨床スポーツ医学会理事長、日本スポーツ医学財団理事長。

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