無事に公演が終了し、カーテンコールで初めて明かりのついた客席に向き合う。
マスク越しの表情は窺い知れないけれど、暖かい拍手が鳴り止まず、場内アナウンスを中断してトリプルカーテンコールとなった時には、じーんと胸が熱くなってこみ上げるものがあった。カーテンコールでこんな気持ちになったのは初めてだった。
終演後の楽屋挨拶も中止なので、舞台から降りたら楽屋に戻って淡々とカツラを取り、衣装を脱ぎメイクを落とし、キャスト・スタッフと挨拶を交わして家路につく。
これも寂しいのだが見方を変えれば、「退館時間ですよー!!」と急かされたりせずに落ち着いて帰り支度をし、さっさと帰って翌日の公演に備えてゆっくり心も身体も休めれば良いのだから。
帰宅するともう10時半。ちびはとっくに夢の中だ。
丸2カ月ほど毎日べったり一緒にいたのに、この1カ月半ほどは保育園への送り迎えからなにから、すっかり夫にまかせきりで寝顔を眺めるだけの日も多い。
コロナ余波でズレ込んだ仕事が舞台に重なり、空前の忙しさになってしまった。
しかし、見方を変えれば、家事をすっかり休んでいるということになる。
10時半に帰宅して、足音をしのばせて風呂場に直行。
風呂上りに、静まりかえった薄暗いリビングでハイボールをプシュッとやって、一缶すすりながらメールをチェックしたり台本をめくる。
リビングにはその直前までの夫の格闘の形跡が散らばっているが(おもちゃやバスタオル、ティッシュやオムツ、歯ブラシや食器、服や絵本などなど)、心の中で「おつかれさま」とつぶやいて私は目を背ける。
片付けは明日起きてからだ。そう決め込んでハイボールを味わう。
小一時間ほど、心をゆるめる時間がなければこっちがやられてしまう。
しかし、これは見方を変えれば、家事を放棄して飲んだくれる主婦。
その瞬間だけ切り取ればそう見られても仕方がない姿だろう。
気にしない!
そして、12時前には就寝。