前述のGPファイナル2017名古屋大会で優勝、勢いに乗って平昌五輪で金メダルを獲得したアリーナ・ザギトワは、18歳で迎える今季、競技会に出場するか否かが取り沙汰される状況にある。もし10代後半でキャリア継続が難しくなるような状況にあるなら、競技として健全とはいえないだろう。

 ネイサン・チェンを教えるラファエル・アルトゥニアンコーチは、ロシアのメディアに対し、使い捨てのカップで飲むコーヒーは陶器のカップで飲む時と味が違うと述べ、一度限りのチャンピオンへの違和感を露わにしている。アルトゥニアンコーチのジュニアからシニアに移行する年齢を上げるべきだという持論は、フィギュアスケートへの理解と愛情が深い名伯楽だからこそのものだろう。

 小さくて軽い少女たちが、懸命に練習して跳ぶ高難度ジャンプは尊い。しかし、キャリアを積んだ彼女たちが円熟したスケーティングを披露する場所が競技会には残されていないのなら、フィギュアスケートの形を再考する必要があるのではないだろうか。(文・沢田聡子)

●沢田聡子/1972年、埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。シンクロナイズドスイミング、アイスホッケー、フィギュアスケート、ヨガ等を取材して雑誌やウェブに寄稿している。「SATOKO’s arena」