翻って、新型コロナウイルス感染症発生後の現代の混乱を見てみよう。感染者の家に貼り紙や投石、他県ナンバーの車をあおる、行政が特定の業界を名指しで批判する……なぜこのようなことになってしまったのか。

「ハンセン病については戦後も続いた隔離政策の過ちを認めて啓発がおこなわれてきたのかもしれませんが、それ以外の感染症に対しては排除がおこなわれてきたのではないでしょうか。感染症全体に対しての差別の問題の議論が、今もう一度考えられるべきです。またハンセン病も過去、患者の家に貼り紙がされたり、患者が里帰りしたら『帰れ』と言われたりする事例がありました。そういった差別を検証するという作業が足りていなかった。なぜ迫害があったのか、なぜ誤った政策がおこなわれてきたのかも含めて理解するための啓発が必要です。感染症教育・人権教育の限界が示されたのではないかと思います」

(文・白石圭)