■授業スタイル(2) 双方向型

 実際の授業と比較的近い状況を作るのが、オンライン会議システムを利用した授業だ。森村学園初等部(神奈川県)ではZoomでの授業を中心に、動画配信、プリント課題を組み合わせたカリキュラムを作った。

「国語、算数、理科、社会は1単位20分、1日2コマのオンライン授業を実施しました。時間が短いという声もありましたが、大学生でも集中できるのは40分程度と聞くので、小学生の集中力を考えるとこれくらいが妥当でした。実技教科、たとえば図工などは編集された動画のほうがわかりやすいので、そういったものはYouTubeで動画を配信しました」(榎本昇先生)

 Zoomでの双方向授業を取り入れた大きな理由は、子どもたちの心のケアという点だ。

「小さなグループに分けて、子ども同士が意見交換をできる場も設けました。家に一日じゅういて、親も子どもも逃げ場がない状況。息抜きというか、気持ちを切り替えるためにも、双方向授業を活用していました。時にはスクールカウンセラーも授業に加わり、子どもたちの健康や心の状態を観察しました」(同)

 慣れないオンライン授業は、子どもたちにとっても難しい面があった。

「学び方にはタイプがあって、図に表して説明すると理解しやすい子(視覚優位)と、言葉を聞いて耳から理解しやすい子(聴覚優位)とがいます。Zoomの授業でもホワイトボードを使ったり、画面共有で資料を見せたりしますが、突発的に『先生、これどうやってやるの?』と聞かれると、図を提示しづらく説明しきれないことがあって、視覚優位の子は学習しづらかったかもしれません」(同)

 一方で、オンラインならではの利点を生かした授業も展開された。

「オンライン授業は、まるで『どこでもドア』のように場所や時間をあっという間に飛び越えます。社会科の授業で、教員が田んぼに出向いて田植えの様子をリポートしたり、消防署の方がiPadを通じて消防署の中を案内してくれたり。私が他校の授業に参加したこともありました。こういう取り組みは、これから模索していきたいですね」

■友だちや先生とのつながり

 双方向型アプリは、授業以外でも広く利用された。アンケート回答で最も多く見られたのは、朝の会やホームルームでの活用だ。

 京都聖母学院小学校(京都府)はウェブ会議システム「Google Meet」」を活用しクラスごとに朝の会を行った。

「日直がスピーチをしたり、健康観察をしたりと、通常クラスで行うのと同じ内容です。決まった時間に集まるので、生活リズムが整う良さもありました」(北岡知美教頭)

 また、同校は授業だけでなくクラブ活動もオンラインで実施。バトンダンス部では、先生から送られてきた動画を各自で練習したのち、Google Meetで集まり、みんなで練習をする方法をとった。

「つながり」を意識して動画配信も行ったという同校。体育科教員の発案でYouTube特設サイトを開設し、一緒に体を動かすことを呼びかける動画を配信した。

「子どもたちの体力低下を懸念した教員たちが、家の中でも体を動かせるようにと考えました。『30秒間で腹筋が何回できるか、先生たちと対決しよう』の動画は、あたかも先生たちと一緒に競争している気分になれて、子どもたちも楽しく体力づくりができたようです」(同)

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