井上が言う「以前出演した映画」とは「八日目の蝉」だと思われる。彼女も三浦も、子役出身。キャリアが似ているからこその理解でもあるだろう。

 その4年後に演じたのが、NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」の井伊直親役である。主人公・直虎の幼なじみでいいなずけでもあったが、戦国の争いのなかで他の土地に身を隠さなくてはならなくなってしまう。やがて、立派な若武者として帰還したものの、最終的には非業の死を遂げるという悲劇的な役だった。

 直虎(幼名・おとわ)を演じた柴咲コウは、

「最初はお互いに様子を見ていた部分がありましたが、回を重ねるごとに本音でお話ができるようになりました。春馬くんは笑顔の似合う好青年で、実直な感じが本当に役にぴったりです。あの笑顔を思い出して何年か生きていけそう(笑)。おとわもきっとあの笑顔が見られなくなってしまう絶望というより、また見られるという希望をつないで待っていたのではないでしょうか」(auテレビ)

 生き別れてもなお、初恋の人を思い続けるという物語にリアリティーをもたらしたのは、三浦の笑顔だったのだ。

 その笑顔は、彼の芝居においてさまざまなかたちで武器となった。ときには映画「コンフィデンスマンJP-ロマンス編-」(19年)のように、詐欺師を演じてもどこかにくめない愛嬌と色気を添えたからだ。この役について彼は、

「演じ方の振り幅がすごくあるキャラクターで、両極端な部分を演じさせていただけてとてもやり甲斐がありましたし、楽しかったです」(映画パンフレット)

 と、振り返っている。実際、しくじったあと、江口洋介扮する悪徳実業家に船着き場でボコボコにされる場面など、それまでのかっこよさとみっともなさのギャップがじつに魅力的に仕上がっていた。

 ちなみに、詐欺師の想像を超えるだまし方で手玉にとるヒロイン役の長澤まさみは「春馬くんは本当にピュアな方で」(同・パンフレット)と言っている。ピュアとか爽やか、真面目というのが、多くの共演女優の口から出る言葉だ。

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「『大きくなったね』って言われたかった」(稲垣来泉)