その後、健康器具の販売やラーメン店での修行、広告代理店社員と職を転々としながら、漫画家・水島新司氏の草野球チームで内野手としてプレーしていたが、テレビ企画で吉本興業の芸人チームと対戦した際に久々にマウンドに上がったところ、周囲もあっと驚く138キロを計時。あれほど悩まされた肩の痛みも消えていた。

「まだ現役でやれるぞ」の声に押される形で、「国はどこでもいい」とプロ再挑戦を決意。知人の新聞記者の紹介で93年、台湾の俊国ベアーズにテスト入団すると、先発、リリーフで活躍し、15勝4敗1セーブの好成績を挙げた。

 かつての“金の卵”の奇跡的復活に、日本の球団も獲得に動き、94年、子供の頃から憧れていた中日への入団が実現する。

 そして、ヤクルト移籍1年目の97年5月27日の横浜戦(横浜)、0対2の5回2死からリリーフした野中は6回まで無失点に抑え、7回に味方が3点を取って逆転。「ここまで来るのが、すごく長かった」という涙のプロ初勝利を手にした。

 引退から14年経った新庄剛志氏も、現役復帰を目指すことを宣言したが、過去に例のない長いブランクを経て、どれだけ実力を発揮できるか、注目される。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球 を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2019」(野球文明叢書)

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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