「打撃なので感覚的なことが多かったけど、それがお互いに理解できたのが良かった。印象に残っているのは、投球の呼び込み方と状況に応じた手首の使い方。まずは投手のリリースからインパクトまで、しっかりイメージを持つことの重要性。打席に入った瞬間から投球の軌道を意識して、自分の間合いまでしっかり投球を呼び込む。投手との勝負を自分のペースに持ち込むことができれば、良い結果が出る確率も高まる」

「手首を柔らかく使って、球に逆らわずに打ち返すことも話してくれた。それまでは強く打ち返すことが最も大事だと考えていた。落合さんの逆方向への打撃が良い例だったが、手首を柔軟に使うことで自由に打ち返せる。『簡単だからやってみ』と言われて自分なりに試行錯誤した。そのうち自分にしっくりくる形が見つかり、中堅から右方向への打球が飛ぶようになった。手首が柔軟に使えれば逆方向だけでなく、自然に引っ張ることもできる。投球に逆らわず、球威を利用して打ち返す感覚が身についた」

 当時本拠地だったナゴヤ球場は右中間にスコアボードが設置されていた。宇野の本塁打はその前あたりのスタンドに着弾するものも多かった。手首の柔軟な使い方を会得したことも大きかったはずだ。

 落合は気にかけた選手と打撃論などを交わすことでも有名。

 西武時代の清原和博を新人時代から目をかけ、気になることがあればダメ出しをおこなっていた。オリックス時代のイチローが安打を放ち一塁上へ来るたびに、打撃内容を確認しあっていたともいう。最近では西武・山川穂高がお気に入りのようで、テレビ番組での対談では予定時刻を大幅に過ぎても話続けた。

 宇野もバットマンとして落合に一目置かれていたのだ。

 宇野といえば守備で『やらかす』印象が強かった。珍プレー番組の常連であり、中でもショートフライを頭に当てた『ヘディング事件』は球史に残る笑劇プレー(81年8月26日、巨人戦、後楽園球場)。まもなく40年が経つというのに、今でもオンエアされることがあるほどだ。

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落合は宇野の“やらかす”イメージの守備も評価