普通だったら、こんなこと、わざわざ総理が口を挟むことではありません。東電は民間企業であり、原発にいるのは会社の社員なのですから。しかし、あの時点では、もう1号機から3号機までダウンして、どんどん放射能が漏れ始めた危険な状況でした。イチエフから全員が撤退すれば、半径250キロ圏内の住人は全員避難しなければならなくなる。東京も含めて、何十年、下手したら50~60年も人が住めない状況になるという最悪のシナリオも考えられました。そうしたぎりぎりの局面での判断は、総理がやるしかない。それが判断できない人は、総理大臣としての資格はないのです。

――では、コロナ禍における安倍首相の対応をみて、その資質はあったと思いますか。また菅(スガ)氏が首相指名された場合、この重責を担うことはできるとお考えですか。

 安倍さんが、コロナに関して的確な判断をしてきたとはまったく思いません。安倍さんが判断ができないのは、彼をサポートする官房長官が、十分なサポートができていないことも一つの原因だとみています。

 安倍総理は学校の一斉休校など、あまり本質とは関係のないところではトップダウンで判断をして、PCR検査の拡大など大切な施策では、判断を遅らせました。検査体制を拡充するには、さまざまな医療機関を動かさなければいけませんが、医療機関も国立大学病院なら文科省管轄といったように、省のをまたぐこともある。各大臣は自分の管轄は動かせても、すべてを集約できるのは総理しかいません。すべての省庁を動かして、もっと早くPCR検査を増やしていれば。初期対応も変わったはずです。それが今になってもまだもたついているのだから、リーダーシップを発揮できているとは到底言えません。

 もっといえば、安倍さんは初期の段階で、ダイヤモンドプリンセス号の中にいた感染者を、電車で帰すという大きなミスをしたわけです。初期段階から判断を間違っていたと言わざるを得えません。安倍政権はコロナ対応において、明らかに間違った判断をした。そこは、次の総理は変えていかなければならないはずです。しかし、それを「同じでいい」と菅(スガ)さんは肯定してしまう。総理の資質として、問題があることは明らかです。(取材・文=AERAdot.編集部・飯塚大和)