1982(昭和57)年11月に房総各線の急行が廃止されたものの、両国発着列車の全廃は逃れ、特急の3往復が両国発着となった。しかし88(昭和63)年にうち2往復が撤退、残るは「あやめ9・8号」1往復のみとなってしまった。「あやめ8号」が17時18分に両国に到着、「あやめ9号」が鹿島神宮に向け19時18分に発車するというダイヤだった。しかし両国からの乗客は数えるほどで、「成田エクスプレス」がデビューした91年3月、この最後の定期特急も東京発着に改められて両国から姿を消したのである。

■旧設備の活用などによって駅の魅力を発信

 3番線ホームは両国駅3番線ホームはその後も用いられてきた。房総方面に残されていた新聞輸送列車が両国を基地としていたためである。しかし、その最後の定期列車も、館山自動車道の開通など房総の道路事情が改善したのを受けて2010(平成22)年に任務を終了。ついに3番線の灯が消えることとなった。
 
 その後の3番線は団体列車や臨時列車に用いられ、2018(平成30)1月にはサイクルトレイン「BOSO BICYCLE BASE」のターミナルとして活用されることとなった。改札を通らずに道路と3番線とをつなぐ専用通路を設けるなど、新たな試みを取り入れてのデビューである。

 また、旧駅舎の積極的な活用も進み、1996(平成8)年に「ビアステーション両国」が開業。2016(平成28)年には複合飲食施設「-両国-江戸NOREN」として発展を見せた。3番線ホームはイベントで貸し出されるケースもあり、第一線を退いたもののまだまだ活躍し続けている。(文・植村 誠)

植村 誠(うえむら・まこと)/国内外を問わず、鉄道をはじめのりものを楽しむ旅をテーマに取材・執筆中。近年は東南アジアを重点的に散策している。主な著書に『ワンテーマ指さし会話韓国×鉄道』(情報センター出版局)、『ボートで東京湾を遊びつくす!』(情報センター出版局・共著)、『絶対この季節に乗りたい鉄道の旅』(東京書籍・共著)など。