ハーバードの学生も、皆びっくりするほどアフターユーが板についています。見事なまでに自然体で相手に先を譲ります。

 ブッフェ形式の食堂でパンやスープを盛り付ける時、寮の扉をあける時、クラスルームの席から出入りする時、売店でレジに並ぶ時、駐車場に続くエレベーターですれ違う時。それは、男性が女性に対してのみ譲るレディーファーストの時だけではありません。女性同士、男性同士、異性間においても頻繁に見られます。

 ハーバードの学生にアフターユーの精神が徹底されているのは、幼少の頃から譲り合いの精神を教え込まれているからです。競争意識の激しいアメリカ社会だからこそ、競争に一定のルールが設けられているのだと、私は解釈しています。

 民族、人種、出身地、母国語などが様々な社会においては、同一民族間の暗黙の常識というものがありません。だからこそ、明白なわかりやすいルールが生まれます。

 日本人には、最初は暗黙のルールに思えるアフターユーの精神も、実は、アメリカのエリート社会では明白化しているのです。

 譲り合いで一つ気をつけたいことがあります。アフターユーは、男性・女性の区別なく、実践することです。もし、男性と女性が譲り合うようなことがあった場合にどうするか。それはもちろん、男性が女性に譲るべきです。女性も、そこは素直に譲られる方がスマートですね。

■「すみません」はなるべく言わない

 相手への気遣いは、とっさの一言にも表れるものです。

 人に素直に「ありがとう」と言える人を見ると素敵だな、と感じます。感謝の気持ちを自然体で表すためには、常に人に対して公平で、人の好意をオープンに受け入れる気持ちがなければできないと思うからです。

 そのためか感謝を表現できる人には、どこか秘めた自信が感じられます。一方で、いつも謝罪ばかりしている人を見ると、悲しい気持ちになります。どことなく卑屈な印象を受け、自信のなさが感じられるからです。

「すみません」はとても便利な言葉ですが、私はなるべく使わないようにしています。

「すみません」には、「ありがとう」という感謝の意味と「ごめんなさい」という謝罪の意味の両方があります。どちらともいえない、あるいはどちらも含んでいる、そのニュアンスが、「すみません」の便利なところです。

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「サンキューが9割」を心がける