「どうして毎年インフルエンザワクチンを接種しないといけないのですか」とお聞きになる方もいらっしゃいます。インフルエンザワクチンは不活化ワクチンであり、病原体となるウイルスの感染能力を失わせたものが原材料となります。そのため、ワクチンを接種して得られた免疫は時間とともに弱まってしまいます。だいたい、接種した2週間後から5カ月程度しか効果は期待できません。また、インフルエンザウイルスには多くの亜型が存在しており、ウイルスの構造は常に少しずつ変化しています。 

 そのため、世界保健機関(WHO)は、世界中からデータを集め、専門家の意見を元に最も一般的に流行すると示唆されている3~4種類の推奨の型を決定しています。日本ではWHOのデータをもとに、昨シーズンにおける国内の流行状況や世界各国におけるインフルエンザの流行状況などを考慮して会議を行った結果を元に、ワクチンの型を決めています。日本では、インフルエンザは例年12月頃から流行し始め、1月末から3月上旬ごろに流行のピークを迎えます。そのため、流行すると予想された株に対するインフルエンザワクチンを、流行りだすまでにワクチン接種を毎年終えることが望ましいのです。

 とはいえ、厚生労働省の「定期の予防接種実施者数」によると、2018年度の65歳以上のインフルエンザの予防接種実施率は、47.9%です。韓国は85.1%、英国は72%、米国は68.7%であり、OECD加盟国の国々と比較すると、接種率はまだまだ低いことがわかります。

 はたして本当に、秋から冬にかけて新型コロナウイルス感染症と一緒にインフルエンザが流行するのでしょうか? アメリカ疾病予防センター(CDC)は、秋から冬にかけて何が起こるのかを確実に言うことはできないが、インフルエンザウイルスと新型コロナウイルスの両方が流行する可能性が高いと考えている、といいます。

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中国武漢ではコロナとインフルエンザ同時感染の報告も