最近では、日本でもAEDの重要性が広く認知されるようになり、普及が進んでいます。2018年に日本循環器学会と日本AED財団は、「スポーツ現場における心臓突然死をゼロに」するための提言を発表しています。これはスポーツ中に心臓発作を起こして亡くなる突然死をなくすため、救命に欠かせないAEDを倒れてから3分以内に使えるよう配置するなどの体制整備を求める提言です。スポーツイベントでは、心停止が起こる可能性を想定内と捉えて、周到な準備をすることが望まれています。スポーツ関係者は、心停止への一次救命処置の訓練を受けておくべきでしょう。

 心臓突然死の防止のために、もう一つ重要なことがあります。それは、スポーツ選手のメディカルチェックです。肥大型心筋症などの心疾患をメディカルチェックで事前に検出することによって、アスリートの突然死は年々減少しています。隠れた疾患の有無のチェックなしに、過度な運動をしないことが大切です。

 市民マラソンでは、メディカルチェックを参加の条件とする団体も増えてきています。受診する場合には、循環器内科もしくはスポーツドクターがいる病院を選ぶとよいでしょう。

 以上、スポーツと心臓のこと、そしてスポーツ現場で起こりうる突然死のリスクに備えるために大切な点をおわかりいただけたでしょうか。今後もスポーツを楽しみながら健康に過ごすために、必要なメディカルチェックを受けて、自分の体調をしっかり把握したうえで、トレーニングをおこなうことを心がけましょう。また、万が一身近でスポーツ中に心停止で倒れた人がいたら、迅速に救命に協力できるように準備をしておきましょう。

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松本秀男

松本秀男

松本秀男(まつもとひでお)/医師。専門はスポーツ医学。1954年生まれ。東京都出身。1978年、慶応義塾大学医学部卒。2009年から2019年3月まで、慶応義塾大学スポーツ医学総合センター診療部長、教授。トップアスリートも含め多くのアスリートたちの選手生命を救ってきた。日本臨床スポーツ医学会理事長、日本スポーツ医学財団理事長。

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