また、須田氏は河野氏がネットで人気を集める理由について、「親しみやすさ」を挙げる。

「普通であれば一般の人が一国の大臣とコミュニケーションをとるにはハードルが高いですが、双方向型のコミュニケーションツールを利用することで、身近に感じられるのも要因の一つでしょう。内容も堅苦しくなく、親しみが持てます」

 その言葉どおり、河野氏はユーザーへの積極的なリプライを基軸に、「エゴサーチキャンペーン」など、定期的にムーブメントを起こしてきた。須田氏いわく、「売れっ子YouTuberのような存在」になっている。実際にネットユーザーからは「人間味のあるところが好き」「お茶目」「実直そうで好感が持てる」「ビシっと言える河野さん推し」などと、河野氏に好感を寄せる投稿も数多くみられる。
 
 須田氏は「これだけ人気が高くて重要ポストを経験しているのであれば、将来、総裁になる可能性は十分ある」と言う。

「今回、独自に支持者を集めて出ることも不可能ではなかったと思いますが、麻生派が菅氏を支持する中で出馬すれば、離反という形で干されてしまい、将来の総裁選で不利になる。今後を見据え、今は時期尚早とみて見送ったのでしょう」

 派閥の壁に阻まれる形となった河野氏。現状の最有力候補は、菅氏との見方が強い。こうした状況に、ネットでは「自民党は世論をよく見ろよ!」「首相任命権が国民にないのが悔やまれる」といった声も挙がっている。

 須田氏は、議員と党員だけで選ぶ現行の制度について「時代と逆行している。どんどん閉じられた方向に向かっている」と懸念を示す。議員が保身に走る限り、「こうした制度は当分変わらないだろう」という見方を示しつつ、「今回の総裁選がきっかけで、世論との隔たりに『おかしいんじゃないか』と言う声が広がって、次の選挙で自民党が勝てなくなるといった事態になれば、与党の立場を守るために制度を変える可能性はある」と話した。

 SNSの発達で民意が可視化されやすくなったこの時代に、「内輪完結型」の総裁選は悪目立ちするようになった。2000年、当時の小渕恵三首相が倒れ、森喜朗氏が首相に就任したときにも、世間から「密室人事」と大いに揶揄された。前近代的な秘密主義、そして現行の制度を続けるか否かは、今後の民意と選挙に左右されそうだ。(取材・文/AERAdot編集部 飯塚大和)