周囲の待望論が届いたのか、苦戦が続くチームに石原が戻ってきた。そして8月20日のDeNA戦では、今季初スタメンでマスクを被った(※石原は28日に再び登録抹消)。

「石原さんは別格。チームの雰囲気が変わりそう」と球団関係者はベテラン合流に大きな期待をかける。

「リーグ3連覇前の勝てない時期も知っている数少ない存在。ここまでチームの調子が悪いと、若手を中心に雰囲気は悪い方向へ向かいがちになってしまう。そんな中でも泰然としていて、ちょっとのことでは慌てるそぶりも見せない。また雑に見えるプレーをした選手を、ベンチ裏の見えない場所で諭したりしていた。こういう存在が強いチームには必要です」

 3連覇時には黒田博樹や新井貴浩という兄貴分がいて、チームの雰囲気を作り上げたのは有名。同様の役割ができる石原の存在は大きい。

 特に調子の出ない『左のエース』クリス・ジョンソンへの影響は大きいはずだ。

「石原のことを心から尊敬している。来日時から日米の違いなど、野球からプライベートまで細かいことを石原が教えてくれた。自分が投げる時は、可能なら捕手を石原にして欲しい、と語ったこともあった。外国人投手にここまで信頼される捕手はなかなかいない。今年は結果が伴わずストレスをためていたはず。信頼できる捕手が受けてくれれば、技術、精神の両方で上昇気流に乗れるはず」(球団関係者)

 ローテーションの軸と期待されながら開幕から勝ち星がないが、今後は石原と組むことなどで調子を上げられるか……。

「勝つことと育成の両立は難しい。特に捕手の場合は時間がかかる。今、佐々岡監督はその真っ只中で苦しんでいる。実力はあるチームなので歯車が噛み合えば必ず勝てる。粘って上位チームに喰らい付いていくこと。そのためにも捕手のバランスを大事にして欲しい」(広島OB)

『打てる捕手を試合に使って守備面も育てる』方法に比重が偏り過ぎていた。そしてチーム自身の歯車が大きく狂った。非常事態に『守れる捕手』石原の存在感は大きい。これから先の戦いで、必ず必要となってくる場面もあるはずだ。

 同時にその中で『打てて守れる捕手』が育っていけば、広島の未来はさらに明るいものになる。しかもそんな理想的捕手が同時に数人生まれる可能性すらある。やはり広島は楽しみな球団だ。