8月22・23日放送の『24時間テレビ43 愛は地球を救う』(日本テレビ系)の中で、志村けんさんを題材にした「誰も知らない志村けん 残してくれた最後のメッセージ」というドラマ企画があるという話を聞いたとき、その点が一番気になっていた。「笑い」を生業とする芸人を追悼するということの困難さは、どのように克服できるものなのか。

 実際に放送された内容を見た感想としては、なかなかよくできていると思った。日本テレビのディレクターを主人公にして『天才! 志村どうぶつ園』がどのように始まったのか、その番組の舞台裏では何が行われていたのか、といったところに焦点を絞っていた。

 番組制作の裏側を題材にしたのは、テレビ局が制作する志村さんのドラマ企画としてはこの上なくふさわしいものだったと言える。志村さんの生前の感動的なエピソードなどを無理に集めようとしても、すでにその手の企画はほかでも何度も行われていて新鮮味に欠けるし、『24時間テレビ』という大型特番の中であえてそれをやる意義も乏しい。

『天才! 志村どうぶつ園』は、志村さんにとって新境地と言える仕事だった。それまでの彼は、自身のコント番組以外にはほとんど出演しておらず、バラエティ番組で素に近い自分の姿を出すことに消極的だったからだ。

 そんな志村さんが、知られざる動物好きの一面を出してレギュラー番組を始めるというのは、それ自体が彼の長いキャリアの中でも特別なことだった。その裏側を描く番組というのは、この局でしか作れないものとなる。

 また、バラエティタレントとしての志村さんに焦点を当てることになるので、コントの映像を見せて、それが面白いかどうかが問われる、といったことにもならない。

 ドラマの中では、過去の番組映像が使われたり、関係したタレントの証言が挟み込まれたりしていた。純粋なドラマというよりもドキュメンタリーに近い内容だった。役者として柄本明、上島竜兵、肥後克広など志村さんゆかりの人物も起用されていて、かゆいところに手が届く内容だった。

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偉大な人物を亡くした事実に真摯に向き合う