「正」か「悪」かにすぐに決めがちな世の中になると、何が危険か考えると、魔女狩りにつながる。ひとつの出来事に対してひとつの意見の方向に何ひとつ検証をしないで動くと、民衆が全部動いてしまう。いまは情報があり過ぎて、調べればすぐわかるということがわかっているばかりに逆に分析しなくなってんじゃねぇか? って思っているんです。

 だから、すべてが単純な思考回路になっていて、特に表に出ているニュースに関しては、そう。そして、「悪」になった人を徹底的にたたく。いやいや、この人が「悪」であるとなった理論はなんですか? この人に起きたことがどうしてこうなったか時系列で言えますか? 問われるとみんな何となくしか答えられないんだけど、「〇〇が言っていたもん!」とか、挙句の果てに「そこまでは知らんかったもん!」っていう。関西弁での話の展開のオチにある散々しゃべり倒したあとに「知らんけど!」みたいな、そんな状況になっているような気がする。

 今回番組で取り上げたアイドルの問題だけじゃないですよ。例えば、僕が出演している「直撃LIVEグッティ!」で安藤優子さんが熱中症中継でメッチャたたかれていたんですけど、その時、僕はスタジオにいたんですよ。誰かが、安藤さんと男性レポーターとのやり取りの一部分だけを切り取って「リポーターが倒れそうになっているのにヒドイ!」となった。でも、結果、熱中症で倒れたりしていないんですよ。CMの間に、安藤さんもスタッフも「大丈夫だった?」「ちょっと、緊張してしまっていたのかしら?」とか、ちゃんと心配して、やり取りをしているんですよ。

 だから、決して“安藤優子さんが冷たかった”わけでもなんでもないんですよ。僕は偶然その日に現場にいたから見ただけですけど、それが真実。視聴者にとってはテレビの画面で起きていることが全てだから、安藤さんの対応に疑問を感じて切り取ってネットに上げる人がいるのかもしれないけれど、ネットだけを見た人たちは「これはどういう場面で起きたのか」とか「その前後にどんな展開があったか」とか何も考えないから、そこに“真実”はなくなってしまっているんですよね。そうなると、「正」か「悪」かの流れしかない。

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「いや、ちょっと待てよ」って深く考えなければ