CM制作者の意図は、「もっと生理のことを知ろう!」という程度のものだっただろう。CMは花王ロリエの新プロジェクトの一環で、ウェブサイトには、生理の重さや日数を記入してできあがったジェムが天然石に見立てられ「あなたの個性」として表現されるページがある。「かわいー!」「私の天然石はこれ~!」と女性たちが華やいだ感じで会話することが期待されていたはずなのに……。残念。

 おそらく「生理は個性」という言葉だけでなく、プロジェクト全体に漂うメッセージが、今の時代とずれていたのかもしれない。たぶん、キラキラしすぎていて、そして少し古いのだと思う。

 私は20年以上、海外の生理用品を輸入販売してきている。この数年、フェミニズムの勢いを背景に生理用品の海外のCMが変わってきているのを実感する。不自然に爽やかさを演出せずに、経血を表現するときは青い水ではなく赤い液体を使うようにしたり、女性のモデルも生理中のけだるさをみせたり、笑わなかったり、また、さまざまな体形の人が登場するCMが目立つ。
 
 アジアでも台湾は特に個性的で、「(生理とは)もう閉店間際なのに入ってきて食べ終わっても帰らない客みたいなもんだよ!!」とぶつくさ言うウェートレスがケチャップをぶちまけたり、ヘビメタががんがん流れる音楽で生理の経血の勢いを表現したりと笑わせるCMが多くて驚く。

 それに比べて日本は相変わらず、生理中でも生理中じゃなくても女性にキラキラと爽やかさと前向きな優しさを……求め続けてきた。ようやく大手生理用品の会社が「生理について語ろう!」とメッセージを放っても、天然石を出されたり、痛いのに「個性だよ」とほほ笑まれたり、もうそういうのに、疲れたんですよね。キラキラを強制されるのも、女ならキラキラした石が好きだろうと決めつけられるのも。太陽の光、優しいそよ風が演出された小さな箱の中に「笑ってろ」と押し込められるような窮屈さに、日本の女性の大きな意識が抵抗しはじめているのかもしれない。

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日本的な生理用品、生理の語られ方