写真はイメージです(Getty Images)
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北原みのり氏
北原みのり氏

 作家・北原みのり氏の連載「おんなの話はありがたい」。今回は「生理は個性」と表現した生理用品のウェブCMについて。北原氏は、今の時代とずれているのではないか、と疑問を呈する。

【写真】女性の生理を擬人化した「生理ちゃん」

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CMにおけるジェンダー炎上の歴史は長い。最古の炎上は1975年、インスタントラーメンのCMで「わたし作る人、僕食べる人」というコピーが、“性別役割分業を固定化する!”という女性団体からの強い抗議を受け、CMは2カ月で打ち切りになった。

 あれから既に半世紀近くたつ。さすがに2020年に「わたし作る人、僕食べる人」レベルの分かりやすいものは薄れつつあるが、根っこにあるミソジニーやパターナリズムがうっかり露呈してしまう企業CMは珍しくない。うっかりの性差別意識だから制作者側も「なぜこれが炎上する!?」と、もしかしたら困惑しているのではないか……というレベルで難易度が高くなっているように思う。
 
 先週公開された花王ロリエのウェブCMはそういうものだった。
 
 CMでは女性タレントが「生理がしんどくて休みたいと思ったとき、どうする?」と一般女性たちに問いかける。その問いに数人の女性がそれぞれの言葉で、「我慢しちゃう」「休む発想がない」と語りはじめ、最終的には「生理のことをオープンに言えるようになったらいいな」「変わっていかなきゃいけないと思う」と、生理を語ることで女性たちがつながっていこう!というポジティブなメッセージを伝えている。……一見問題なさそうだが、決めのコピーがこれだった。

「生理を個性ととらえれば、私たちはもっと生きやすくなる」

「生理は個性」……の言葉に、目が覚めるような気分になった女性は少なくなかったはずだ。ちょっと待ってよ、花王さん、あなた生理用品を何十年も売ってきて、それはないんじゃないか。痛みやつらさも「個性」と捉えることで健康問題を見逃す危険があるわけだし、だいたい女性同士が互いの生理を理解せず対立している前提もおかしいよね……といった批判が相次いでいる。

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北原みのり

北原みのり

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

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