「面白うなってきた!」「教えてくれ……源三郎!」。三谷幸喜さんオリジナル脚本で2016年に放送され、草刈正雄さんが演じた真田昌幸の台詞が大きな話題となった大河ドラマ「真田丸」。昌幸のキャラクターと名台詞の数々はどのように生まれ、育ったのか? 草刈さんが著書『人生に必要な知恵はすべてホンから学んだ』(朝日新書)で明かした秘話とは……。

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直球の決め台詞

 三谷幸喜オリジナル脚本による、NHK大河ドラマ『真田丸』(2016年)。僕にとって、1976年の『風と雲と虹と』から数えて7本目の大河出演でした。

 主人公真田信繁(幸村)に堺雅人さん、兄の信之に大泉洋さん。真田丸とは、信繁が大坂の陣で築いたとされる大坂城の出城です。「戦国の荒波に立ち向かう一艘の船」に真田家を喩えた、三谷さんらしいタイトルでもあります。そう、真田丸は家族船なのです。

 撮影前の衣裳合わせ。真田昌幸のいでたちは、マタギのような毛皮つきでした。のちに秘かに、「毛皮のロングコート」と自分で呼んでいましたが、とにかく、ザ・ワイルド。

「これはイケる!」

 直感的に確信しました。「都会モンには負けん!」というような田舎のイケイケ親父の魂が乗り移ってきました。

 戦国の世に生まれるべくして生まれた男、「表裏比興の者」「謀略家」とされながら、甲斐武田家への忠誠は生涯ゆるがず、徳川軍に対して2度も勝利をおさめた戦国時代きっての知将。家紋の六文銭は、昌幸の異名にもなります。六文銭は冥銭、すなわち三途の川の渡し賃を分身とする、まさに「いつ死んでも恐れなし」の男です。

 三谷さんの台本を読んで、さらにわかりました。ああ、そういうことか、と。やるときはやる。落ち込むときは真剣に落ち込む。慌てたときは息子にさえすがる。主への忠義を果たし、一族を守り抜く。怒る。笑う。叫ぶ。泣く。「質実剛健」「沈思黙考」といった従来の厳かな武将のイメージから解放され、じつに人間味に溢れている。

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