八千代松陰高時代は3番手の控え投手だったが、現役時代に変則左腕でならしたヤクルト・安田猛スカウトの目に留まり、テストを経てドラフト外入団。89年春、打撃投手として参加したユマキャンプで、池山隆寛、広沢克己らの主力をきりきり舞いさせた快投が認められ、19歳で1軍入り。内藤尚行、尾花高夫に次ぐ先発3番手として、落差の大きいカーブを武器に6勝9敗1セーブ、リーグ8位の防御率2.83と一気にブレイクした。

 だが、投げるボールのほとんどがカーブとあって、相手チームに研究された2年目以降は、勝ち星が伸びず、92年に14試合に登板したのを最後に2年間、1軍登板がなかった。

 そんな苦難の日々を経て、95年に最速150キロを記録するなど、リリーフとして40試合に登板。カーブに切れ味が戻った97年にも、自己最多の60試合に登板し、5勝1敗6セーブ、防御率1.99で、リーグ優勝の大きな力に。野村克也監督も「加藤は殊勲甲や。あいつがおらんかったと思うとゾッとするわ」と最大の賛辞を贈っている。

 西武との日本シリーズでも、1勝1敗で迎えた第3戦で、同点の5回からリリーフし、2回を無失点に抑えて勝利を呼び込むなど、“野村ヤクルト”最後の日本一に貢献した。

 高卒1年目から3年連続二桁勝利を記録しながら、この数年、期待を裏切りつづけている藤浪晋太郎(阪神)も、今季は復調気配を見せているだけに、近い将来、再ブレイクする可能性も十分ありそうだ。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2019」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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