そんな努力が実を結び、翌17年は開幕から先発ローテ入り。制球力の良さを生かして、チープトップの12勝と一躍エースに成長した。

 一昨年、昨年は右膝手術の影響などから成績ダウンも、今季は7試合に先発して4勝(8月20日現在)とエース復活を目指している。

 今年で38歳の亀井善行(巨人)も、20代後半にブレイクしたあと、相次ぐ故障や巨大戦力の中での熾烈なサバイバル戦を乗り越えて、9年後に再び規定打席到達という稀有な成長曲線を描いている。

 入団5年目の09年、実績不足ながら、守備力を買われ、第2回WBCの日本代表メンバーに選ばれた亀井は、このラッキーチャンスを踏み台に急成長。同年は打率2割9分、サヨナラ弾3発を含む25本塁打、71打点の活躍で、5番打者として7年ぶりの日本一に貢献した。

 だが、翌10年は打撃不振に故障も追い打ちをかけ、2軍落ちを3度経験。1割8分5厘、5本塁打、17打点に終わり、ルーキー・長野久義にポジションを奪われてしまう。

 内野にコンバートされた11年も、12球団一の巨大戦力の中でファースト、サード、外野と一定せず、打順もめまぐるしく変わるなど、持ち味を発揮しきれなかった。12年も出場60試合にとどまった。あまりにもケガが多いため、翌13年から登録名を「義行」から「善行」に変えた。

 以来、“改名効果”で出番も増え、15年には、巨人の84代4番打者として17試合に出場。18年は球団史上最長ブランクとなる9年ぶりの二桁本塁打・13本を記録し、09年以来の規定打席にも到達した。

 そして、昨季も規定打席に達し、2割8分4厘、13本塁打、55打点で5年ぶりのリーグ優勝に貢献。さらに今年7月9日の阪神戦で、史上305人目の通算1000本安打を達成。37歳11カ月での快挙は、もちろん球団史上最年長だ。

 競争相手に惑わされることなく、黙々とゴールを目指す。まさに「ウサギと亀」の亀のような野球人生だ。

 80年代から90年代にかけてヤクルトの左腕として活躍した加藤博人も、山あり谷ありの野球人生だった。

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