大柄の選手の中に“埋もれず”輝きを放ったスパッド・ウェブ(中央)(写真/gettyimages)
大柄の選手の中に“埋もれず”輝きを放ったスパッド・ウェブ(中央)(写真/gettyimages)

「小さかったら高く跳べ」。

 このフレーズに聞き覚えがある人は、どのくらいいるだろうか。1980年代からのNBAファンであればピンとくるだろうし、何のフレーズかすぐに語れるだろう。

 これは、1980年代後半ごろに流れたスポーツメーカー、ミズノのCMのキャッチフレーズだ。この頃、NBAは日本で今のような知名度はなかったが、当時アトランタ・ホークスでプレーしていたスパッド・ウェブ氏が同社とシューズ契約を結んでいたことから、このCMに登場。約170cmというバスケットボール選手としては小さすぎるその身体でダンクを決め、一躍有名アスリートになった。

 現在57歳となったウェブ氏は、その身長にも関わらず垂直跳び117cmという驚異的な跳躍力を生かし、1986年のオールスターで開催されたスラムダンク・コンテストではチームメイトの“ヒューマン・ハイライトフィルム”ドミニク・ウィルキンスと決勝で戦い優勝。単にダンクシュートを決めたのではなく、リバースダンク、360度回転してのダンクと多彩なテクニックを披露し、ウィルキンスを圧倒していた。

 小兵のウェブ氏が凄いのはダンクだけではかったことだ。NBAでは12シーズンでプレーし通算で814試合に出場。うち429試合でスターターを務めキャリア通算で9.9得点、5.3アシスト、1.1スティールというアベレージを残した。客寄せ的な扱いではなく、NBAで主力として活躍したというわけだ。

 八村塁が日本人初のNBAドラフト1巡目指名を受けたことで、日本のみなさんもNBAプレーヤーになるということがいかに狭き門で、困難なことであるかを感じることになっただろう。そして、そのNBAで生き抜くには、屈強な体格とフィジカルが必要であり、身長2m以上というのが必須条件であることは疑いもないことだ。

 しかし、そんなスーパーアスリート集団の中にも、ウェブ氏のように一般社会に入っても目立つこともないような身長のプレーヤーが稀に存在し、巨人たちを手玉に取るようなプレーを見せてくれている。

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小兵なのにダンクコンテストの常連も!