2012年夏、当時2年生だった松井が武器にしたのは鋭く縦に変化するスライダーだ。上背はないものの全身を使ったダイナミックなフォームから投げ込むスライダーに打者のバットをことごとく空を切り、初戦の今治西戦では大会新記録となる22奪三振をマーク。準々決勝で光星学院(現・八戸学院光星)に敗れたものの、4試合36回を投げて68奪三振と圧巻の数字を残している。田中のスライダーは横に滑るものだったが、松井のスライダーは縦の鋭く落ちる分、三振も多く奪うことができたと言えるだろう。

 直近では一昨年と昨年の夏に出場した林優樹(近江)のチェンジアップもなかなか強烈な印象を残すボールだった。残念ながら今年は春、夏ともに甲子園大会は中止となったが、2020年代も新しい魔球を操る好投手が出現してくることを期待したい。(文・西尾典文)

●西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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西尾典文

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西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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