■筒井道隆が見せる悪役に期待

 第3話ではスピンオフで主演した俳優・吉沢亮が突然、登場。半沢たちのピンチを救う一幕が話題となった。

「来年の大河ドラマで主演が決まっている吉沢亮がワンポイント登板ですからね。相当贅沢なキャスティングだと思います。今シリーズから登場した賀来賢人の存在感もいいし、半沢の妻役である上戸彩が毎回ほぼワンシーンしか出ないのもいい。あくまでも“半沢が窮地に陥り、倍返しをする”という単純明快なストーリーだけにすべてを集約させる、その思い切りの良さが見事です。巷では歌舞伎役者が多く出演し、顔芸を披露しまくることから“半沢歌舞伎”とも言われていますが、ストーリーの積み上げ方もまさに歌舞伎スタイル。勧善懲悪なストーリーには一切の無駄がないし、見得を切るシーンまでの持っていき方が本当に素晴らしい。『倍返しだ!』と久々に聞いて、『待ってました!』と歌舞伎の屋号を叫びたくなるような心境になったのは私だけではないはずです」(前出のプロデューサー)

 第3話では同じく歌舞伎役者の片岡愛之助が前シリーズから久々に再登場。オネエキャラがやや強めになってたり、「な~お~き~」と半沢を名字ではなく名前で呼ぶあたり、少々やりすぎな感もあるが、やはりしっかり見せ場をつくっている。今後は、本シリーズで名を挙げた滝藤賢一さんがどこで再登場するか、視聴者は期待しているところだろう。

 ドラマウオッチャーの中村裕一氏は本ドラマのただならぬ魅力をこう分析する。

「ソーシャルディスタンスなどおかまいなしに、あれほど登場人物が接近してぶつかり合うドラマはコロナ時代の今、逆に新鮮で痛快です。多くの視聴者が決して諦めない半沢に自分自身を重ね合わせ、自粛生活の鬱憤を晴らしているのだと思います。また、顔芸だけでなく、心に刺さる名ゼリフが連発されるのも魅力。ここまで来たら最後に半沢が渾身の倍返しを決めるのはもはや確実だと思いますが、“バブル世代”の半沢から賀来賢人演じる森山たち、いわゆる“ロスジェネ”と呼ばれるこれからの世代に向けてどんなメッセージが贈られるのかも注目したい。そして、その後に控えている『銀翼のイカロス』をベースにした帝国航空編では、柄本明や江口のりこといった個性派俳優が登場しますが、中でも政府直属の再建チームのリーダーを演じる筒井道隆に注目したい。これまで好人物のイメージが強かった筒井がどんな悪役ぶりを見せてくれるのか、新境地に期待がかかります。視聴率も含め、最後まで目が離せません」

 7年のブランクや新型コロナの影響があっても、大絶賛されている「半沢直樹」。果たして令和ドラマ史上最高視聴率を叩き出すことができるのか。(藤原三星)

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藤原三星

藤原三星

ドラマ評論家・芸能ウェブライター。エンタメ業界に潜伏し、独自の人脈で半歩踏み込んだ芸能記事を書き続ける。『NEWSポストセブン』『Business Journal』などでも執筆中。

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