睡眠時無呼吸症は、眠っている間に何度も呼吸が止まる病気で、代表的な睡眠障害の一つに数えられる。以前は睡眠時無呼吸症候群の名で知られていたが、現在では病態が明らかになったことで「症候群」が外れ、正式に睡眠時無呼吸症と呼ばれている。

 いびきが起きるのは、空気の通り道が塞がれ、呼吸停止寸前である証拠。いわば、いびきは睡眠時無呼吸症のサイン、前ぶれとなる症状といえる。

 睡眠時無呼吸症はしばしば、居眠り運転の原因としてニュースなどで取り上げられる。実際に重大事故につながった例も多く、たかが日中の眠気といっても、決して油断はできない。

 通常、眠っているときは副交感神経が優位になり、呼吸数や心拍数が減少し、からだはリラックス状態になる。しかし、眠っている間に無呼吸になると、からだが低酸素状態になり、心臓が酸素を届けようとして交感神経が働く。こうなるとからだはリラックスできず、ベッドの中にいても眠れたことにはならない。

 また、呼吸停止による健康被害は眠気だけにはとどまらない。重症度によっては命の危険もあるという。

「睡眠時無呼吸症が直接の死因になることはありませんが、さまざまな病気を呼んできます。寝ている間も心臓が激しく動くので、高血圧症や、心筋梗塞、脳梗塞などのリスクが高まります。さらに酸素が不足することによって低酸素脳症の恐れもある。呼吸をしないとからだの二酸化炭素もたまってしまうので、高炭酸ガス血症にもなります」

 睡眠時無呼吸症が重症化すると、1時間あたり30回以上も呼吸が止まる。また、1回の無呼吸・低呼吸状態が1~2分になることもある。起きているときに1分間も息を止めれば、ほとんどの人は苦しくて仕方がないはずだ。それが寝ている間に何度も発生していると考えると、睡眠時無呼吸症の怖さがわかる。

 現在、睡眠時無呼吸症と診断されている患者数が200万~300万人であるのに対して、未診断の人を含めた推定患者数は800万人にものぼる。寝ている間の病気であるがゆえ、症状が自覚しづらいことや、たかがいびきと高をくくっている人が多いのが原因だと言われている。

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早期治療でさまざまなリスク減少