そして、決勝の川越商(現市立川越)戦は、息詰まる投手戦となったが、この日捕手に専念した久保田は、中学時代からバッテリーを組むエース・小柳聡をよくリードし、散発の5安打に抑える。滑川はわずか4安打ながら、3回に幸運なバントエラーで挙げた1点を守り切り、甲子園初出場の夢を実現した。

「甲子園ではぜひ盗塁を刺してアピールしたい」と捕手らしい抱負を語った久保田だったが、1回戦の境戦では、独特のトルネード投法で打者8人から4三振を奪うなど、阪神時代にジェフ・ウイリアムス、藤川球児とともに“JFK”と並び称されたリリーフエースの片鱗を見せつけている。

 ちなみに同年、東千葉代表として甲子園にやって来た八千代松陰のエース・多田野数人(元インディアンス-日本ハム)も、出場55校中最低のチーム打率1割9分6厘と打線の援護に恵まれないなか、4回戦の東京学館戦を除く決勝までの5試合を完封。自らの右腕でチームを初の夏の甲子園に導いている。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2019」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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