九段坂病院整形外科診療部長の進藤重雄医師
九段坂病院整形外科診療部長の進藤重雄医師

「黄色靱帯骨化症(おうしょくじんたいこっかしょう)」は、背骨を支える靱帯である黄色靱帯が厚くなり、骨に変化する難病です。プロ野球選手が以前、この病気で手術したというニュースを、聞いたことがある人もいることでしょう。元福岡ソフトバンクホークスの大隣憲司投手や千葉ロッテマリーンズの南昌輝投手が発症しています。発症すると、厚くなった靱帯が神経を圧迫して、足のしびれや痛み、脱力などの症状が起こることがあります。日本の靱帯骨化症治療の第一線に立つ、九段坂病院整形外科診療部長の進藤重雄医師に、その症状や診断、治療法について教えてもらいます。

*  *  *

「黄色靱帯骨化症」とは、いったいどのような病気でしょうか。まず、背骨の構造と発症のメカニズムについて説明します。

 私たちのからだの大黒柱である「脊柱(せきちゅう)」は、首から尻にかけて、頸骨(けいこつ)~胸骨~腰骨~仙骨~尾骨へと連なる長い骨格です。脊柱の前側には「椎体(ついたい)」、後ろ側には「椎弓」が積み重なっており、その中を通る脊柱管には、脳とからだをつなぐ重要な神経である「脊髄(せきずい)」が通っています。

 背骨は、からだをしっかり支持しながら可動性を保っていますが、それは椎体と椎弓がそれぞれ上下にいくつかの「靱帯」でしっかりと連結されているからです。その靱帯の一つである「黄色靱帯」は、椎弓の前側にある靱帯です。椎体の後ろ側にある「後縦靱帯(こうじゅうじんたい)」とともに、神経が通る脊柱管に近接する位置にあります。

 その靱帯には、ときに厚くなって骨に変わってしまう「靱帯骨化」が起こることがあります。靱帯骨化は世界的に見てとくに日本人に多くみられ、黄色靱帯骨化は壮年期では30~40%に認められることが報告されています。ただし、骨化があっても必ずしも症状が表れるわけではありません。骨化の検査法としては、X線やCTなどの画像検査をおこないます。

次のページ
中高年以降に多く発症する靱帯骨化の原因ははっきりしていない