「光」の漢字の上の部首は炎の揺らめきを表した(イラスト/もりいくすお)
「光」の漢字の上の部首は炎の揺らめきを表した(イラスト/もりいくすお)

 漢字には、現在の意味からは想像できないような意外な成り立ちのものが数多くあります。そこで、漢字研究の大家であった白川静博士の「白川文字学」に基づいて、古代文字と比較しながら成り立ちを見ていきましょう。”漢字忘れ”を防ぐには、成り立ちから覚えるのが効果的といいます。今回は私たちに身近な「自然」がテーマです。

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 ~火を守って神に仕える聖職者がいた

古代文字は、跪(ひざまず)いている人の頭上に大きな火がある形です。火と人「儿(じん)」の組み合わせで、火を扱う聖職者を表しています。古代中国では、火は神聖なものだったので、火を守って神に仕える人がいたのです。「光」は、のちに火が放つ「ひかり」の意味になり、さらに広く「ひかり」を表すようになりました。


~生命の源に「米」が加わった

元の字は「氣」です。「气(き)」の部分は雲が流れる形が元になっていて、生命の源を表すといいます。その「气」を養うための「米」を加えて「氣」になりました。「気」はすべての活動の源泉で、大気、元気のように用いられます。


~かつて「河」いえば黄河のこと

古代文字は「さんずい」と「か」(※「か」とは古代文字で「可」の「口」を取った部分をさす)の組み合わせです。「か」は木の枝で、折れ曲がることを表します。中国の北部を流れる黄河は、途中で90 度に曲がって流れており、かつては「河」といえば黄河のことでした。のちに広く「かわ」の意味になりました。


~川の「あご袋」に水がたまった

「胡(こ)」は、牛のあごの下に垂れている肉のことです。鵜(う)やペリカンでいうところのあご袋です。川からあふれ出た水がたまってできた湖は、川のあご袋ととらえられました。そのため「胡」に「さんずい」をつけた「湖」が「みずうみ」の意味になりました。

※漢字の成り立ちには諸説あります。
※漢字エンタメ誌『みんなの漢字9月号』から抜粋

監修/久保裕之(立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所)