■特定の医薬品購入で控除される「セルフメディケーション税制」

 今まで説明した医療費控除の特例として、健康の維持増進、病気の予防に一定の取り組みを行っている人に向けた「セルフメディケーション税制」というものもあります。「スイッチOTC医薬品」と呼ばれる医薬品を購入した際に、その購入費用について所得控除を受けることができるものです。この医薬品はドラッグストアや薬局で手に入る一般的な風邪薬や胃腸薬、鎮痛剤など非常に多岐に及び、どれが対象商品かはレシートに記載されています。
 
 この医薬品を年間に1万2千円以上購入した上で、会社や自治体の健康診断を受けている人が対象となります。1万2千円を超える分については、今まで説明した医療費控除と同様に税率に応じた額が所得税から控除されます。
 
 ただ、このセルフメディケーション税制は、医療費控除と併用ができません。どちらか一方になるので、有利な額となるほうを自分で判断する必要があります。

■みんなもらった「10万円」。特別定額給付金には税金がかかる?
 
 今回税金についてお話ししたので、余談になりますが、あの「10万円のお金」、特別定額給付金の税金上の取り扱いについて少し書いておきます。
 
 7月の時点で9割の人に給付済という発表もあったので、特別定額給付金がすでに振り込まれたという人も多いと思います。この10万円ですが、税金上の取り扱いはどうなっているのでしょうか。「所得」となるなら、税金がかかってきます。またパート・アルバイトで働いている人は、扶養になるぎりぎりで収入を調整している場合も多いですが、この10万円がプラスされることで、そのラインを超えてしまう心配もあるかもしれません。
 
 答えを言えば、特別定額給付金について税金はかかりません。扶養のラインも変わらないので心配はいりません。事業主やフリーランスの人を対象とした持続化給付金は収入とされるため、今年度に利益が出れば翌年の申告時に課税対象となります。
 
 なお特別定額給付金の申請は、すでに締め切った自治体もありますが、多くは8月中のようです(自治体により締め切り日は異なります)。もしまだという人がいれば、急いで確認したほうがいいでしょう。

 次回も損をしないための社会保障の基礎知識について、引き続き解説していきたいと思います。

(構成・橋本明)

※本連載シリーズは、手続き内容をわかりやすくお伝えするため、ポイントを絞り編集しています。一部説明を簡略化している点についてはご了承ください。また、2020年8月5日時点での内容となっています。

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小泉正典

小泉正典

小泉正典(こいずみ・まさのり)/特定社会保険労務士。1971年、栃木県生まれ。明星大学人文学部経済学科卒。社会保険労務士小泉事務所代表、一般社団法人SRアップ21理事長・東京会会長。専門分野は、労働・社会保険制度全般および社員がイキイキと働きやすい職場づくりコンサルティング。『社会保障一覧表』(アントレックス)シリーズは累計55万部のベストセラー

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